次世代継承学

【第118話】鉄スクラップの国内活用 vs 輸出攻勢

「資源貧困国の日本で唯一豊富な蓄積量を誇る資源。それは鉄スクラップです。鉄スクラップは、何度でも安価で再生可能な資源であり、循環型社会の形成において重要なエコマテリアルです。」

廃品回収及び資源貿易に従事されている方とお話をした際に、鉄くず資源について考えさせられました。

■「重要な資源として国内リサイクルを推進すべき。」

  • 意見1: リサイクル促進による環境負荷の軽減が見込める。
  • 意見2: 循環型社会の実現への貢献。
  • 意見3: 新たな産業の創出と経済効率の向上が期待出来る。

■「抱え込むよりも輸出で金に変えるべき。」

  • 意見1: 短期的な経済利益の追求が優先だ。
  • 意見2: 国内での処理能力や技術の不足が懸念としてある。
  • 意見3: 国際市場での需要に応えることによる外貨獲得が狙える。

国内循環消費

  1. 目的: 環境負荷の軽減と循環型社会の実現を目指す。
  2. 建前: 国内リサイクルを通じて、資源の持続可能な利用を促進する。
  3. 本音: 国内産業の活性化と新たなビジネスチャンスの創出。
  4. 信条: 環境保護と資源の有効活用を重視する。

輸出資源派

  1. 目的: 短期的な経済利益の追求と外貨獲得。
  2. 建前: 国際市場での需要に応え、日本の鉄スクラップを世界に供給する。
  3. 本音: 国内での処理能力の不足や技術的な課題を回避する。
  4. 信条: 市場原理に基づき、利益最大化を目指す。

■理想と現実の間

「己より優れたる者を周りに集める術を知りたる者、ここに眠る。」
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの墓にはこの言葉が刻まれています。
カーネギーは鉄鋼生産や鉄道建設を背景にアメリカの工業化を推進した人物であり、鉄鉱石から鉄をつくり出す生産工程の工業化を実現させました。
そしてカーネギーメロン大学の創設など、多額の寄付を慈善事業に投じた篤志家としても知られる人物です。

その鉄鋼業とは、簡単に言えば鉄と鋼を生成するメーカーのことです。
この業界には主に2つの主流メーカーが存在しています。

1つは、鉄鉱石や原料炭(コークス)などの原材料を高炉(溶解炉)で製鉄し、製鋼、鋼材製品まで一貫生産する高炉メーカー。
→現在日本には、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の3社しか無いと言われています。

もう1つは、鉄スクラップを電気炉で溶解し、不純物を取り除いたうえで製鋼、鋼材製品を製造する電炉メーカーです。
→主に東京製鐵、JFE条鋼、共英製鋼など。

また、鉄鋼は主に3つの炉を通じて生成されると言われています。

  • 高炉:鉄鉱石やコークスから銑鉄を取り出す役割。
    →製鉄工程の上流であり、製鉄所の中核を担うが、火力発電を使うため温暖化ガス排出量が多いのが難点。
  • 転炉:高炉で出来た銑鉄(不純物が混じった鉄)を鋼に転換する役割。
    →高炉でできる銑鉄に含まれる炭素や、不純物の除去を担うために必要な工程。
  • 電炉:世に出回る鉄や鋼などのスクラップを原料として、鉄を新たにリサイクル生成する役割。
    設備費や消費エネルギーが少なくて最も環境に優しいが、電気料金値上げなど外的要因に左右されるのが懸念。

「日本は永い間スクラップ輸入国だったが、現状は10万t程度と殆どない状態になった。」
現在、日本は豊富な鉄鋼を有しており、輸入する必要はないほど鉄スクラップが余っています。

その鉄スクラップが輸出戦略に使える理由は明確です。
電炉は高炉による製鋼方法と比べて、製銑工程がない事や生産量当りに発生する電力消費を抑えられるからです。
そのため、初期費用や膨大な資源消費に耐えられない国は電炉で安価に鉄を生成するという選択肢を検討します。

私たちは先進国と言えば、ビル群が立ち並ぶイメージを持っているかと思います。
つまり、そこには鉄の生産量が関係しているというわけです。

資源貧困国と言われる日本は、余った鉄スクラップをどう使うべきなのでしょうか。
高炉から電炉に切り替えて鉄を生成することでコストと環境に優しい開発に踏み切るべきか。
それとも輸出貿易によって外貨を得るべきなのか。

「製鉄技術の練度は、薄くて軽くて丈夫に集約されていく。」
例えば、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の高炉3社は世界でも最高峰の製鉄技術を誇ります。
では、もしこの先の未来で高炉から電炉に切り替わってもなお、この水準が保たれたら何が起きるのでしょうか。

それは、つまり、世界で最先端の脱炭素化を実現した新たな生産モデルが確立されていくということです。
その時、日本は「鉄くずからスーパーカーを生み出した国」と評される未来も考えられるでしょう。

そんな世界が実現されるかもしれないという期待感がこのテーマの面白いところだなと感じさせられました。

■乖離を埋めるための事例

  1. 循環型社会のモデル事例: 日本国内での鉄スクラップの完全なリサイクルシステムの構築。出典: JISRI
  2. 技術革新によるリサイクル促進: 高度なリサイクル技術の開発と導入。出典: 経済産業省
  3. 国際協力による資源管理: 国際的な資源リサイクルネットワークの構築。出典: JFE Holdings CSR Report 2022
  4. 政策と規制による輸出管理: 鉄スクラップの輸出を制限し、国内利用を優先する政策の導入。出典: 経済産業省
  5. 消費者意識の変革: リサイクル製品への需要を高めるための消費者啓発活動。出典: DTIC

■未来を担うべき主体

鉄スクラップの国内活用と輸出依存のバランスを取るべき主体は、政府、産業界、研究機関、そして消費者になるでしょう。

■乖離を埋めるための具体的な手段

  1. 技術革新とリサイクル施設の拡充: 国内での処理能力や技術の不足に対処する。
  2. 政府補助金と民間投資の促進: 初期投資の高さに対処する。
  3. 多角化戦略とリスクヘッジ: 国際市場の変動性によるリスクに対処する。

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