次世代継承学

【第106話】格差は是正すべき vs 自由は守られるべき

「日本はかつて一億総中流と称されるほど経済格差が少ない国でしたが、近年では勝ち組や負け組といった言葉が使われ、経済格差の実感が増しています。未だに格差をどう克服すべきか結論は出ていません。」

シンクタンク研究員をされている方とお話をした際に、経済格差について考えさせられました。

■「経済格差は是正されるべきであってはならないものだと思う。」

  • 意見1: 経済格差は社会的不平等を生み、教育や健康などの機会にアクセスする能力に影響を与える。
  • 意見2: 格差の拡大は社会的緊張を高め、犯罪率の増加につながる可能性がある。
  • 意見3: 経済的不平等は政治的不平等を生み出し、民主主義の原則に反する。

■「我々の自由や権利は維持されるべきものだと思う。」

  • 意見1: 市場の自由な競争は効率的な資源配分を促進し、経済成長を促す。
  • 意見2: 個人の努力と才能が報われるシステムは、イノベーションと起業精神を刺激する。
  • 意見3: 過度な格差是正は個人の自由と財産権を侵害し、経済活動の抑制につながる。

■格差は是正すべき

  1. 目的: 社会的公平性と均等を実現すること。
  2. 建前: すべての市民に平等な機会を提供する。
  3. 本音: 政治的な支持を得るために社会的不平等を緩和する。
  4. 信条: 社会的公正と平等は社会の基本的な価値である。

■自由は守られるべき

  1. 目的: 効率的な資源配分と経済成長を促進すること。
  2. 建前: 個人の自由と競争を通じて経済的成功を実現する。
  3. 本音: 経済的エリートの利益を保護する。
  4. 信条: 市場の自由と個人の努力が最も公正な結果を生む。

■理想と現実の間

「理想的な政策が提案されても、それを実現するための資源や支持が不足している。何より相手が人間なのだからそう簡単ではない。」
これはいつの時代にも行き着く結論です。
知識人と呼ばれる人々のみならず、多くの人々が分かっていることなのに進まないことがあります。

それはひとえに、利害関係が複雑に絡み合っているからです。

「物価が上昇している今、デフレスパイラルを完全に乗り越えるためにも物価上昇に応じて賃金を上げていくべきだ。」
わざわざシンクタンクの主席研究員や経済学者が言わずともこのような意見は国民にとっても当たり前の結論として語られています。
※デフレスパイラルとは、物価下落→企業の売り上げが減る→企業の利益が減る→設備投資や雇用の調整→個人消費の減少→物価がさらに下落という現象です。

経営者も投資家も同じ目線で未来を見ています。
つまり、先行きが不安である限り動けないということです。

「賃金を上げて→消費を活性化させて→定価も上げて→売上を上げて→利益を出して→設備投資と雇用の調整をして…。」
頭では分かっていても、どうしても不安になります。

なぜなら、日本経済が動くには周囲の企業もみな同じような決断をする必要があるからです。
裏をかくような人がいればいるほど連帯感は生まれず、企業努力が実を結びません。

先行きが不安だからこそ、企業は公的支援でも無い限り目先の利益確保に手を打ちます。
言ってしまえば、日本の中小企業は優秀な経営者が多いからこそ、利益確保を目指して原価流出を叩きまくった結果がデフレスパイラルを引き起こしていたとも考えられるでしょう。

それは、つまり、国というのは明るい未来を描ける環境でないと成長しないということです。
言い換えれば、閉塞感が日本を覆う今、克服する何かが無い限りデフレ脱却は夢のまた夢になりかねないということです。

「大阪万博を失敗と定義づけるのはまだ早いですが、もしもIR(Integrated Resort)だけが軌道に乗って地方展開されたらどうなるか。」
あり得ない話かもしれませんが、IRを誘致してラスベガスやマカオのようにカジノの莫大な収益を基にV字回復を果たしたらどうなるのか。
その頃には、インバウンド需要が過去一で盛り上がって日本経済が潤う反面、地方には外国人が滞在するようになるでしょう。

良いか悪いかは置いておいて、それぐらいの妄想発言で夢を語らなければ日本人はロマンチストになれないという意見も出てきそうなのが今の日本です。

「すべての悲しみが消えるようにとか、すべての心が繋がるようにとか、願うだけでは叶わない思いを叶えるために私は進もうと思っています。」
おおむね、投票率が上がらない理由は政治に無力感を覚えたからだと思っています。
何かを誰かに期待するよりも自分の力で何とかしてやろうと。

つまり、理想の未来をロマンチックに描けなくなってしまったこと。
それが、日本人が閉塞感を克服できない理由かなと思わされました。

■経済格差を克服するための事例

  1. 最低賃金の引き上げ: 経済格差を減少させるために、最低賃金を引き上げることは、低所得者の生活水準を向上させる効果的な方法です。 出典: Berkeley
  2. 普遍的基本サービスの提供: 全ての市民に対して基本的なサービス(例えば、ヘルスケア、教育)を提供することで、経済的不平等を減少させることができます。 出典: Keough School
  3. 教育への投資: 教育は経済格差を減少させるための重要な手段です。教育へのアクセスを改善し、教育の質を向上させることで、より多くの人々が経済的成功を収める機会を得られます。 出典: OECD
  4. 所得税制の進歩性強化: 所得が高い人々に対してより高い税率を適用することで、所得の再分配を促進し、経済格差を減少させることができます。 出典: IMF
  5. 労働市場の改革: 労働市場の改革を通じて、より多くの人々が良質な雇用を得られるようにすることも、経済格差を減少させる効果的な方法です。 出典: Talk Poverty

■未来を担うべき主体

経済格差を減少させるためには、政府、民間企業、非政府組織、そして市民社会全体の力が必要です。

政府は政策の策定と実施を担い、民間企業は公正な雇用慣行を採用し、非政府組織は社会的意識を高める活動を行い、市民は政策に対する支持を示して頂きたいと考えています。

■乖離を埋めるための具体的な手段例

  1. 政策の実施: 効果的な政策を策定し、実施するためには、政治的リーダーシップと社会的支持が必要です。
  2. 教育と啓発: 社会全体に経済格差の問題についての認識を高め、解決策に対する支持を集めるためには、教育と啓発活動が重要です。
  3. 資源の配分: 効果的な政策を実施するためには、必要な資源を適切に配分することが重要です。

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コメント

  1. 星屑のかけら

    こんにちは。どんどんと鋭く切れるメッセージになってきており、いつしか斬鉄剣のようになるのではないかなんて思ったりします。

    さて、今回のブログも興味深く拝読させていただきました。
    私の意見として、『(本人に起因しない)格差は是正されるべき。』というものがあります。
    例えば、自らのチカラで取り巻く環境を変える事の厳しい子供/未成年、本人に起因しないハンデを背負っている方への格差です。
    逆説的に述べると、自らのチカラで環境を変えられる(と見なされて然るべき)ヒトの格差は是正される必要はない。という考え方ですね。

    「おれは被害者なんだ。」「私の格差は環境によるものなんです。」
    さて、そういった方々は多くいるかと思いますが、果たして本人に原因/過失が全くないと言い切れるでしょうか。

    「変え方がわからないんだよ。」「やったことがない/できないから仕方ないじゃない。」
    いや、最初は誰もが知らない状態がスタートですし、勉強法に正解がないといわれるのと同様、個々人に適した手法を探しながらできるようになるしかないのではないかと思います。

    その積み重ねが、現状の”格差”として表れているのであれば、それは本人に起因する格差であると言わざるを得ないでしょうし、
    『人は生まれながらにして平等ではない。』というセリフがコードギアスというアニメ内で登場しますが、資質や能力、環境が全く同じ人間など存在しないはずです。
    それをどのように補うのか、伸ばすのかが学びであると思いますし、自らのチカラで環境を変える。ということではないでしょうか。

    回り道の多い文章を書いてしまいましたが、
    私は『(本人に起因しない)格差は是正されるべき。』という考えかたを持っています。

    • 青木コーチ

      いつもコメントありがとうございます!

      「(本人に起因しない)格差は是正されるべき。」
      この言葉が印象に残りました。

      アメリカの哲学者ロールズは、社会福祉は正義の行為だと主張した人です。
      彼は正義の原則を2つ挙げています。
      第一原理:私たち個人は、自由な権利を平等に持つべきである。
      第二原理:不平等は、最も不利な立場の人々にとって有利な形で調整されるべきである。

      その上で、全ての人が「無知のヴェール」を被れば、個々人の立場を越えた普遍的な正義となると。
      公平な視点から社会を設計するに違いないと。
      ※無知のヴェールとは自他の年齢や収入など一切の情報が分からない状態にする魔法のヴェール

      「そのヴェールって本当にあるの?どうやって?」
      しかし当然ながらそのヴェールは概念的なものなので実在しません。
      そこからマイケル・サンデル達はロールズの正義論を叩き台として研究を深めています。

      情報が巡ることの時代において、どうやって富を再分配するべきか。
      (本人に起因しない)格差はどうやって証明すべきか。
      遺伝子レベルで格差があるという発想もあります。

      では、管理社会になれば格差を是正できるのでしょうか?
      そんなことを考えさせられました。

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