次世代継承学

【第125話】労働意欲は上から授ける vs 労働意欲は個々で見出す

「エンゲージメントが高いと、離職率が下がり、生産性が向上する。日本企業は総じてエンゲージメントが低く、向上が急務だと感じている。」

組織改革マネジメントをされている方とお話をした際に、エンゲージメント向上施策について考えさせられました。

「この企業で働く理由が分からなくなった。」
今、日本企業は組織や仕事への自発的な貢献意欲を示すエンゲージメントが落ちつつあるそうです。
それは、就活で誰もが聞かれたであろう、「なぜ同業他社ではなく、弊社を希望されるのですか?」に対する回答が出来なくなりつつあるということです。

「会社を金を稼ぐ場であって、それ以上でもそれ以下でもない。」
具体的に言えば、コロナ以降、飲みニケーション及び、職場の仲間がお互いを知る機会が極端に減りました。
それにより、同僚の人間性がイマイチ分からないまま与えられたミッションを共にクリアしている状態となりました。

つまり、企業に対しても組織に対しても、エンゲージメントが四方八方で落ちてしまったと。

そのために、ビジョンや目的の浸透、職場環境の改善、ワークライフバランスの推進、人事制度の見直し、対話の強化が解決策として挙げられています。

ドイツの経済学者カール・マルクスは、労働から喜びが感じられなくなることを疎外感と呼びました。
またマルクスは、下部構造の生産関係が上部構造の文化を変容させる要因だと語りました。

つまり、日本の下部構造はエンゲージメントが落ちて仕事に対する情熱を失いつつある状態です。
そして、いずれ上部構造にも何かしらの影響が出てくる可能性が予想されます。

その1つが、責任感の欠如、あるいは責任の所在を有耶無耶にするという現象です。

世の中は、関係性と連鎖反応で動いています。
誰かがいい加減な気持ちで事に当たれば、誰かがそれを引き継ぎ、どこかで正さなければどこまでも波及していく。
その積み重ねは、いずれ社会関係資本の消失を招くと考えられます。

つまり、それは、無縁社会への永続的な従属です。

「私にはそもそも縁がないから、人に迷惑をかけることに対する実感が湧かないんです。」
この感覚が伝播されることで、私たちは自分の振る舞いの基準を見失っていきます。

言い換えると、恥とは、人の眼差しがあって初めて成立するのではないかと。
そんなことも考えさせられます。

私たちは、セカンドプレイスに対する所属意識が希薄になることで、持続可能な社会とは何かについて、新たな側面から問われ始めています。
これを解消していくためにも、会社と個人のエンゲージメントを高めることはとても重要だと考えられます。

「リーダーの指示で組織が一気に動くことが理想だ。」

  1. 意見: 経営層による明確なビジョンと方針の提示がエンゲージメントを向上させる。
  2. 意見: 経営層が定めた一律の人事制度の改革やワークライフバランスの推進が効果的。
  3. 意見: 会社全体としてのエンゲージメント向上プログラムの導入が有効。

「現場主導で組織が変化を重ねることが理想だ。」

  1. 意見: 従業員主導のイニシアチブやプロジェクトがエンゲージメントを高める。
  2. 意見: 直接のマネージャーとの1on1や対話の機会の増加がエンゲージメント向上に寄与。
  3. 意見: 従業員の意見やフィードバックを積極的に取り入れる文化がエンゲージメントを向上させる。

■トップダウンのエンゲージメント向上策

  • 目的: 組織全体の生産性と効率性の向上を促進する。
  • 建前: 全社員が経営層のビジョンと目標に沿って動くことで、一致団結し、企業の成長を実現できる。
  • 本音: 経営層がコントロールを維持し、迅速な意思決定と実行を通じて、組織の方向性を確実に示したい。
  • 信条: 効率的な管理と統制により、組織の目標達成を図る。

■ボトムアップのエンゲージメント向上策

  • 目的: 従業員の自主性、創造性、満足度を高めることで、組織全体の革新と成長を促進する。
  • 建前: 従業員一人ひとりが自身の仕事に意義を見出し、組織への貢献を通じて個人の成長を実現できる。
  • 本音: 従業員の意見やアイデアが組織の革新を生み出し、経営層もこれを支持し、促進したい。
  • 信条: 従業員のエンゲージメントと参加を基盤とした開放的な文化が、組織の持続可能な成長を支える。

■理想と現実の間

人口減少と高齢化

  • 理想: 組織は多様な人材を引きつけ、若手の活躍により新たなアイデアやエネルギーを得ることができる。
  • 現実: 組織内での高齢化が進み、新たな人材の獲得が困難になっている場合がある。
  • 対処法: 新卒採用だけでなく、キャリア採用やダイバーシティ&インクルージョンの推進により、幅広い人材を惹きつける。

資金とリソースの不足

  • 理想: エンゲージメント向上のためのプログラムや施策に必要な資金やリソースが十分に確保される。
  • 現実: 予算制約により、エンゲージメント向上のための施策の実施が困難な場合がある。
  • 対処法: 限られたリソースの中で最大の効果を発揮するために、効率的なプログラムの選定や、非金銭的な報酬の活用を考慮する。

地域間格差の拡大

  • 理想: すべての部署やチームがエンゲージメント向上の取り組みから均等に恩恵を受ける。
  • 現実: 特定の部署やチームのみが取り組みの恩恵を受け、他の部署やチームは取り残されることがある。
  • 対処法: 組織全体でエンゲージメントの重要性を共有し、各部署やチームが取り組みに参加できるような仕組みを作る。

持続可能性の確保

  • 理想: エンゲージメント向上の取り組みが持続可能な成果をもたらす。
  • 現実: 短期的な成果に重点を置きがちで、長期的な視点での取り組みが欠けることがある。
  • 対処法: 短期的な成果だけでなく、長期的な視点を持って取り組みを計画し、定期的な評価と見直しを行う。

地域住民の参加と協働

  • 理想: 従業員が主体的にエンゲージメント向上の取り組みに参加し、協力し合う。
  • 現実: 参加を促すための仕組みが不十分で、従業員の積極的な参加が得られない場合がある。
  • 対処法: 従業員が参加しやすい環境を整備し、積極的な貢献を奨励する文化を育む。

■乖離を埋めるための事例

企業の目的やビジョンの共有

  • 事例: 従業員全員に企業の目的やビジョンを明確に伝え、それぞれがどのように貢献できるかを理解させる取り組み。例えば、月一の全体会議でビジョン達成に向けた進捗報告と個々の貢献方法を共有する。
  • 出典: NTTコトハ

上司のマネジメント力向上

  • 事例: 上司を対象としたマネジメント研修を実施し、従業員一人ひとりとの1on1ミーティングを定期的に行い、従業員の意見や悩みを聞くことで、信頼関係を築き、エンゲージメントを向上させる。
  • 出典: ユニポス

社内コミュニケーションの強化

  • 事例: 社内SNSの導入やランチミーティングなどを通じて、部署間の壁を低くし、社内コミュニケーションの活性化を図る。従業員が自由に意見やアイデアを交換できる環境を作ることで、組織全体のエンゲージメントを高める。
  • 出典: DiscoverHR

■未来を担うべき主体

組織・企業

  • 役割: 組織のビジョン、ミッション、価値観を明確にし、それを社員と共有する。
  • 責任: 従業員がそのビジョンに共感し、エンゲージメントを高めるための環境を整える。

経営層・リーダー

  • 役割: エンゲージメント向上のための方針を策定し、その実施をリードする。
  • 責任: 直接的なコミュニケーションを通じて従業員のモチベーションを高め、支援を提供する。

人事部門

  • 役割: エンゲージメント向上プログラムの企画・実施を担う。
  • 責任: 従業員からのフィードバックを収集し、プログラムの改善につなげる。

従業員

  • 役割: 自身のエンゲージメント向上に積極的に取り組む。
  • 責任: 組織のビジョンに対する自身の貢献を理解し、主体的に行動する。

エンゲージメント向上は、単一の主体の責任に帰することなく、組織全体で共有すべき責務です。

組織・企業が明確なビジョンを提供し、経営層がそのビジョン実現に向けて従業員を導き、人事部門が支援体制を整え、従業員が自らのエンゲージメントを高める努力をすることで、組織全体のエンゲージメント向上につながります。

それぞれの主体が自らの役割と責任を自覚し、積極的に取り組むことが重要です。

■乖離を埋めるための具体的な手段

パーソナライズされたコミュニケーション戦略

  • 手段: 従業員一人ひとりのニーズと期待に応じたコミュニケーション方法を採用する。
  • 目的: 従業員が組織の一員として価値を感じ、エンゲージメントを高める。
  • 出典: TechTarget ITmedia

エンゲージメント・サーベイの活用

  • 手段: 定期的にエンゲージメント・サーベイを実施し、従業員の声を収集する。
  • 目的: 従業員の期待と現状のギャップを明確にし、改善策を講じる。
  • 出典: HR Trend Lab

共通言語の確立

  • 手段: 上司と部下、異なる部署間で共通の言語や価値観を確立する。
  • 目的: 組織内のコミュニケーションの障壁を減らし、理解と協力を促進する。
  • 出典: PRDX

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