次世代継承学

【第141話】なぜすべての情報は万人に共有されないのだろうか?

「情報の非対称性は、市場の透明性を低下させ、特定の市場参加者が不当な利益を得る機会を生み出している。これによって市場の信頼性を損ない、投資家保護が弱まることが懸念されています。」

金融業界に勤めている方とお話をした際に、情報の非対称性について考えさせられました。

「知は力なり。」
イギリスの哲学者フランシス・ベーコンは、人間の知性の優位を説いています。
もっと遡れば、数多の神々を従えたことで有名な指輪を持つソロモン王も知識を追求しました。

そう、現在、私たちの世界は知識の量と質を持つものが優位になるように設計されています。
それは疑いようのない事実です。

その根本的な原因が情報の非対称性という概念です。
それは経済学の用語で、取引の当事者間で保有する情報に差がある状態のことをいいます。
より具体的に言えば、情報の非対称性には、隠された情報(Hidden Information)と、隠された行動(Hidden Action)の2種類が存在しています。

情報の非対称性があると、一方的に情報を持つ側が利益を得られるため、ビジネスや投資などの分野で不公平な状況を生み出すきっかけとなっています。
そのため、これを解消するために株式市場では、重要情報を知る企業関係者らの取引を禁じるインサイダー取引規制などが設けられています。

2008年に発生した世界金融危機(リーマンショック)は、情報の非対称性が市場の失敗につながった典型的な例と言えるでしょう。
金融市場において、住宅ローンの信用リスクを分散させるために作られた複雑な金融商品が、情報の非対称性によって過大評価され、投資家や金融機関に大きな損失をもたらしました。
また、情報の非対称性によって、金融機関の健全性や流動性に対する不信感が高まり、金融システム全体に危機が拡大しました。

ちなみに、情報の非対称性が市場に与える影響について考察する際には、市場の倫理に関する問題も考慮する必要があります。
市場の倫理とは、市場参加者が市場においてどのような行動や選択をすべきか、また、市場においてどのような価値や規範を尊重すべきかに関する問題です。

情報の非対称性が存在する場合、市場参加者は、情報の利用や開示に関して、自己利益と他者利益、正義と効率、自由と責任などの倫理的なトレードオフに直面することになります。
例えば、情報に優位な立場にある市場参加者は、情報を利用して不当な利益を得ることや、情報を隠すことができますが、これは他者の利益や権利を侵害することになります。
また、情報に劣位な立場にある市場参加者は、情報を得ることや公開することを求めることができますが、これは自らのリスクや責任を軽視することになります。

「この世のすべての経済は交換で成立している。」
そう考えていくと、裏金疑惑や悪巧み、詐欺被害などはすべて交換が不公平に行われた結果です。
もっと言えば、突き詰めると情報の非対称性が生み出したものだと解釈が出来るでしょう。

つまり、情報の非対称性という現象は、市場で行われる交換に対して倫理的な問題を引き起こすということです。

だからこそ、市場参加者は、情報の利用や開示に関して、倫理的な判断や行動を行うことが求められています。
本来、情報は万人に開かれたものとして国民や市民が共有しておくべきものだと言えるでしょう。

しかしそれは、決して簡単なことではありません。
なぜなら、情報の非対称性があるからお金が儲かる仕組みが作れるからです。

言ってしまえば、それが無くなれば儲けの仕組みは作れなくなります。
なぜなら、差異を生み出すことが困難になるからです。

立場と視点によって、意見は変わること必至です。

例えば、非上場という括りで見ても、マクロ法人とマイクロ法人とでは情報開示による影響や難易度が全く変わって来ます。
それこそ、株主、投資家、経営者、従業員、仲介、転職者、あらゆる立場と視点から見ても情報の非対称性に対して一家言を持てる状態です。

ということで、今回は情報の非対称性という現象について一緒に考えていきたいと思います。

「知は力なり。」

意見1: 情報の非対称性は市場の自然な特性であり、市場参加者が自己の利益を追求する過程で自然と生じる。
意見2: 情報収集にかかるコストと労力を考慮すると、全ての市場参加者が同等の情報を持つことは現実的ではない。
意見3: 情報の非対称性は、より情報に精通した投資家がリスクを取るインセンティブを持つことを可能にし、市場の効率性を高める。

■「情報は不公平感があってはいけない。」

意見1: 技術の進歩と情報共有のプラットフォームの発展により、情報の非対称性を大幅に減少させることが可能である。
意見2: 法規制や政策による情報開示の義務化は、市場の透明性を高め、投資家保護を強化する。
意見3: 教育と情報アクセスの平等化は、市場参加者間の情報格差を縮小し、より公平な市場環境を実現するための鍵である。

情報の非対称性の受容

  • 目的: 市場の効率性と自由競争を促進する。
  • 建前: 市場参加者は自己責任で情報を収集し、投資判断を下すべきである。
  • 本音: 情報に精通した投資家や大手企業が優位に立つことを容認する。
  • 信条: 市場の自然な動きと自由競争は最も効率的な資本配分を生み出す。

■情報の非対称性の解消

  • 目的: 市場の公平性と透明性を高め、投資家を保護する。
  • 建前: すべての市場参加者が平等に情報にアクセスできるべきである。
  • 本音: 過剰な規制は市場の活力を損なう可能性があるが、公平性が優先されるべき。
  • 信条: 公平で透明な市場は長期的には全ての参加者にとって最も利益をもたらす。

■乖離を埋めるためのきっかけ

■未来を担うべき主体

政府機関: 効果的な規制と市場監督を行う責任がある。

金融業界: 市場の公平性と透明性を確保するための自主的な取り組みを推進する役割がある。

教育機関: 市場参加者に必要な知識とスキルを提供する。

技術企業: 情報アクセスの平等化を促進する新しい技術とサービスを開発する。

消費者団体: 投資家保護と市場教育の普及に向けた活動を支援する。

■理想と現実の間

情報技術の進化:

  • 理想: 情報技術の進化により、情報の非対称性は自然と解消される。
  • 現実: 技術的な進歩はあるが、全ての市場参加者が等しく恩恵を受けるわけではない。
  • 対処法: 教育とアクセスの平等化を通じて、技術の恩恵を広げる。

規制と監督の強化:

  • 理想: 効果的な規制と監督により、市場の公平性と透明性が保証される。
  • 現実: 規制の過剰な強化は市場の活力を損なうリスクがある。
  • 対処法: フレキシブルな規制と市場の動向に応じた監督体制の構築。

市場教育の普及:

  • 理想: 市場教育を通じて、一般投資家の情報リテラシーが向上する。
  • 現実: 教育の機会には依然として格差が存在する。
  • 対処法: オンライン教育プラットフォームの活用と公的支援の拡大。

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