次世代継承学

【第44話】過ぎた力を抑制する力とは何か。

「個人の持つ善意や道徳など当てにならないし、人間は誰しも弱さを持っている。犯罪を行う機会があれば誰でも犯罪者になるだろう。」
犯罪心理学を専攻されている方とお話した際に、人の振る舞いについて考えさせられる言葉を頂きました。

「人は状況に流されやすい。特にプレッシャーがかかると、普段とは異なる行動をとることがある。」
状況が人の行動を左右するという意見があります。
例えば、経済的な困窮や社会的なプレッシャーがあれば、善人さえも罪を犯す可能性が高まるのだと。

「人は自分の価値観や信念に基づいて行動する。状況は関係ない。」
一方、状況は関係なく、人は自分の意志で行動するという意見があります。
強い意志を持っていれば、どんな状況でも自分の信念を貫くことができると。
つまり、状況に流されるのは弱い人だけなのだと。

2008年の世界金融危機の際、多くの人々が経済的な困窮に直面しました。
その時、世界的に窃盗や詐欺などの犯罪が増加したと言われています。

2011年の東日本大震災の際、多くの人々が日常を失いました。
しかし、民度の高さが世界から注目を集めていました。

状況が人の行動を左右するのか、それとも人は自らの意志で行動するのか。
あなたはどう思いますか?

心理学者スタンリー・ミルグラムが行ったミルグラム実験があります。
それは、自分の良心や倫理観に反することは自分の意志で拒めるのかどうかを確認する実験です。
その結果は、権威者から指示や圧力を受けた場合、意志は負ける傾向があることを示しました。

つまり、権威者から受ける指示や圧力という状況が人間の行動に大きな影響を与えるということです。

社会学者ルドルフ・ダーレンドルフが提唱する社会変革論があります。
それは、社会には構造的な矛盾や対立が存在し、それが社会変革の原動力になるという考え方です。

例えば、資本主義社会では、資本家と労働者の間に利益や権力の対立がある。
それが労働者の階級意識や革命運動を生み出すのだと。

つまり、それは、社会的な状況が人間の行動や思想に影響を与えることを示すということです。

心理学者エリク・エリクソンが提唱した発達段階論があります。
それは、人間は生涯にわたって8つの発達段階を経験し、各段階で特定の課題や危機に直面すると考え方です。

例えば、思春期は「自我同一性の確立(アイデンティティの確立)」対「自我同一性の拡散(役割の拡散)」という課題に直面する。
そして自分自身のアイデンティティを確立するか否かという選択を迫られるのだと。

この理論は、人間は自分自身の発達に応じて自分の意志で行動することを示す例です。

アメリカの公民権運動家マルコムXがいます。
彼は、黒人差別や貧困といった不利な状況に置かれながらも、自分の信念や目的に従って活動しました。

彼は黒人の自立や解放を訴え、非暴力ではなく武装闘争も辞さない姿勢を示しました。
そして暗殺されるまでその信念を貫き通しました。

まさに、人間は状況に左右されずに自分の意志で行動することを示す例だと思います。

ではここで、一緒に考えて頂きたいことがあります。
「人間は自由意志や主体性を持っていることが当然と考えられていますが、そもそもなぜ必要なのでしょうか?」
あなたはどう思いますか?

状況と人の意志は、相互に影響し合うものであり、一方が他方を完全に支配することはありません。
人は状況に影響されることがあるが、その中で自らの意志を持ち続けることも可能です。

「みんな違って、みんな良い。でも、本当に善いとは限らない。」
意志の強い人間は、集団や社会として見た時に歴史を揺るがす大事態を引き起こします。
良く言えば革命家、悪く言えば大罪人。

暴走すれば、秩序を乱します。
それは、個人を尊重していますが、人類として見れば危険因子です。

私たちのテクノロジーは、個人の手に余る領域まで来ています。
制御しきれない人間は、抑制の効かない破壊をもたらす可能性があります。

「過ぎた力を抑制する力とは何なのか?」
私たちは、過ぎた力を制御するためにどうべきなのか。
答えはまだ出ていません。

あなたはどうするべきだと思いますか?


※犯罪心理学 とは ※キング牧師とマルコムXについてより深く知りたい ※自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史

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