次世代継承学

【第88話】のれんが失われていく百貨店。

「商店街がシャッター街に変わったことは有名だけど、実は地方の百貨店もどんどん廃業しているんですよね。地産地消のイベントもして地域密着で動いているのに改善が見込めていないです。」
地域経済について研究されている方とお話をした際に、百貨店について考えさせられる言葉を頂きました。

「地方百貨店は、地域の文化や伝統を反映した商品を提供することで、地域住民からの支持を得ることができる。」
伝統的なビジネスモデルを維持するべきだという意見があります。
地方百貨店は、その長い歴史と地域社会における信用を活かせると。

地域の価値を高める商品やサービスを提供し、地域社会との結びつきを強化することが重要なのだと。

「新しいビジネスモデルへの転換は、地方百貨店に新たな顧客層をもたらし、収益の向上につながる可能性がある。」
革新的なビジネスモデルへの転換をするべきだという意見があります。
地方百貨店は、時代の変化に対応し、新しいビジネスモデルへの転換が必要だと。

オンライン販売の強化、新しいテナントの導入、店舗の移転や建て替えも推進していくべきなのだと。

「市場縮小、中心市街地の変化、大型ショッピングセンターの進出、老朽化、情報の優位性の喪失。」
1991年に約9.7兆円の売上を記録した日本の百貨店業界は、その後長期にわたる低迷期に入り、2022年には約5兆円にまで減少しました。
特に、地方百貨店は大都市圏の店舗と比較すると多大な影響を受けています。

「のれんが地方百貨店を救う切り札になる。」
これまで百貨店は、高品質な商品やサービスを提供することで、地域社会や住民からの信頼を得てきました。

その信頼は、百貨店のブランドやイメージとして定着し、顧客のロイヤリティを高める要因となっています。
また、百貨店は、地域の特産品を取り入れた商品開発や、地域イベントの開催など、地域社会との連携を深める取り組みを行ってきました。

例えば、山形県には、かつて創業320年の老舗百貨店・大沼がありました。
大沼は、地元の農産物や工芸品を扱う館を設けたり、地域の祭りやイベントに協力したりすることで、地域の特色を発信する役割を果たして来ました。

また、地域の高校生や大学生にインターンシップや就職説明会を提供することで、若者の地元愛や百貨店への関心を高める取り組みも行っていました。

大沼のように、地域社会との結びつきを強め、顧客の支持を得ることで盤石な基盤を整える百貨店もあります。

「資金繰りに追われ、策を打てず、なんともならなかった。320年の歴史に幕を閉じ、言葉では表せないほど重く受け止めている。」
しかし、2020年1月、負債総額約30億円では老舗百貨店大沼は幕を閉じました。

それは、つまり、伝統を維持するとは、時代の変化に対応できない可能性があるということです。

例えば、消費者の購買行動や情報収集の方法は日進月歩で進化多様化しています。
オンライン販売やデジタルマーケティングに対応したいところですが、オールドなコアファンを逃がすリスクも考えられます。

また、百貨店が老舗であればあるほど、老朽化や過剰な面積などの問題を抱えています。
この問題を解決するためには、建て替えや移転などの大規模な投資が必要です。
しかし、採算の合わない環境で事業転換が実行出来る会社は一握りです。

「大型ショッピングセンターやロードサイドショップなどの新しい形態の商業施設が登場している。」
近年は商業施設の大型化が進み、百貨店とは異なる強みや魅力によって消費者のニーズに応えています。

百貨店が時代の変化に対応できないままでいると、これらの商業施設に顧客を奪われることになります。

「商店街と百貨店は抱えている顧客層が違う。」
商店街もまた、地場に根ざして信用を基にコアファンと共に成長してきました。
しかし、百貨店と同様に苦境に立たされています。
その違いは多々ありますが、顧客層が違うというユニークな意見があります。

「中間所得層は価格訴求になびくが、高所得層は付加価値訴求になびく。」
百貨店は、商店街と比較すれば価格が高い傾向にあります。
その分、来店する顧客層が高所得層である可能性が高いと言えるでしょう。

そこで、百貨店が高所得層の求めるものを訴求できているかどうかは大きな分岐点になってきます。

例えば、年間で販促スケジュールを作成していた時。
多くの年間スケジュールは費用対効果で計算されていますが、ここで見落とされやすいものがあります。

それは、顧客育成です。

「まずはうちでこれを体験してもらって、その次にここにきてもらう。そして次第にこちらも必要だと思ってもらいたい。」
販促スケジュールで、顧客の心理状況がどう変わっていくのかが把握出来ると費用対効果の見え方に変化が起きます。

「お客様の来店動機はアンケートで探るか、それとも売上構成比から探るのか。」
その動機はどのような手順で再現性あるものに出来るのか。
富裕層であればあるほど、付加価値を感じて頂ける状態であれば、興味と金額の範囲を広げてご検討いただくことが出来ます。

かつて江戸時代の日本は、鎖国政策により外国との交流を制限したが、それでもオランダや中国などとの貿易や文化交流は続けました。
その際に、外国の影響に対応しつつも、日本は自分の欲望や感情に支配されず、アイデンティティや価値観を保持していました。

だからこそ我々は、外国の文化や技術を取り入れつつも、日本独自の文化や芸術を発展させることが出来ました。

顧客満足度はリピート率に現れるものです。
百貨店は、顧客の来店動機とリピート率を分析した上で、その百貨店のブランドコンセプトを貫く姿勢が求められます。


※百貨店の戦後史: 全国老舗デパートの黄金時代 ※三越350年: 営業革新と挑戦の歴史 ※世界の夢のショッピングモール&デパート

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