事例分析

【CASE5】AppleのEV事業撤退からみた考察

今回は、年間平均約10億ドル投じ、10年間にわたり進めてきた電気自動車開発が白紙となったアップルについて考察していきます。

問題提起

かつてスティーブジョブズが目指したタイタンプロジェクト、それは未来の自動運転プロジェクトでした。
しかし、Appleはそのプロジェクトを断念せざるを得ないようです。
その傍らで、ソニーがホンダと新たなモビリティーを作ろうとしています。

自動車業界で一体何が起きているのでしょうか。


背景考察

▶考察1
ファブレスメーカーとして有名なAppleの競争優位の源泉は情報です。

固定費や膨大な初期投資が必要とされるハードウェアではなく、アイディア発想ひらめきによって生み出されるソフトウェアに力点を置いています。

とはいえ、情報が外部に漏れた瞬間にAppleの強みは一瞬にして消え失せます。

だからこそ、世界で最もNDA(秘密保持契約)に厳しい会社とも言われています。


▶考察2
Appleは自動運転走行車を生産するために世界中の自動車メーカーにパートナーシップ締結の声を掛けています。

例えば、あのイーロン・マスクのテスラモータースやアメリカ自動車業界の巨人ゼネラル・モーターズを買収しようという案も挙がっていました。

しかし、とうとう交渉はまとまらずに終わっています。

「最初はAppleのブランドを使っていい車が作れるかもしれないが、後々生産工程で埃をかぶるのは我々になるだろう・・・」

そう、なぜならファブレスメーカーとして世界的な企業になったAppleの利益の出し方が、自動車業界の思惑と噛み合わないからです。 具体的に言うとサプライチェーンは同じなのですが、Appleの下請けとして自動車メーカーが生産委託される理由が見出せないということです。


▶考察3
イーロン・マスク「プロトタイプは簡単につくれる。大量生産は難しい。キャッシュフローの黒字化は至難の業だ。」

ソニーCEOの吉田憲一郎「それらを自分たちだけでこなそうとしても難しいでしょう。パートナーが不可欠であると実感しました。」

世界的な自動車メーカーはハードウェアやソフトウェアの部品を個別に担当する何千社ものサプライヤーと関係を築いており、その取引社数の多さゆえに雇用を生み出すことから国からの援助が期待できます。

言い換えれば、自動車業界のカルテルは非常に強く、政治にも意向が反映されやすいという特徴を持っています。

しかしその一方で、取引社数が多いということは、サプライチェーンをまとめることに多大な苦労を要するということです。

なぜなら大前提として、パソコンやスマホと違って自動車は人の命を運ぶプロダクトであるため、不具合が致命的な欠陥に値するからです。

だからこそソニーは、既製品を作るのではなくホンダと合弁会社を設立してEVのプロトタイプ「AFEELA(アフィーラ)」を開発しており、限定生産品という括りで2026年の出荷を目指しています。

画像:ソニーホンダモビリティ

ちなみにコスパ最強スマホの代名詞、シャオミ(小米)も中国国有の大手自動車メーカー・北京汽車を傘下にもつ北汽集団(BAIC Group)の製造支援を受けてEVを生産しています。

また、中国のGoogleと称されるバイドゥ(百度)も浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ)と共同でEVの開発を進めています。

そして、通信大手のファーウェイ(華為技術)と自動車メーカーの奇瑞汽車(チェリー)も、新ブランド「Luxeed」からEVを発表しています。


結論:ソニーとアップルの明暗を分けた差は◯◯だった。

自動車という何千社というサプライチェーンからの業界においては業界全体の共存共栄を模索することが求められます。

資本主義のように資源と労働力を余すことなく使って売上を最大化するという方法が受け入れられない業界もあるということです。

ただし今回のケースで見えて来たのは規格品を作るのではなくプロトタイプを短期的に作るのであればそれほど労力はかからないという点です。

だとすればこの先、車というものが自己表現の場に使われる可能性も高いでしょう‥

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