次世代継承学

【第50話】気付かないし気付けない日本の労働問題

「報酬は無いけど社会と生活を支える必要な労働が存在している。賃金労働は利己的な人間ばかりを生み出していく。」
ミクロ経済学を研究されている方とお話をした際に、労働の種類について考えさせられる言葉を頂きました。

「家事や育児は報酬がないけど、それがなければ社会は成り立たない。シャドウワークは評価するべきだ!」
目に見えない労働を評価することで、より公平な社会を築くことができるという意見があります。
それが、社会や経済の基盤を支える重要な役割を果たしていると。

ボランティア活動や地域の活動もシャドウワークの一部。これらの活動があるからこそ、地域社会が豊かになるのだと。

「報酬がない労働を評価することで、給与をもらって働く人々の労働が軽視されるのでは?」
報酬が伴わない労働が評価されることで、経済的な報酬を求める労働の価値が低下する恐れがあるという意見があります。
すべての労働を経済的な価値で評価する必要はなく、シャドウワークを特別視することで、他の労働の価値を低く見ることになる可能性があると。

シャドウワークを評価すれば、ますます無償の労働を強制されるリスクが高まるのではないかと。

シャドウワークを評価すべきか、それとも無視すべきか。
あなたはどう思いますか?

近年、ジェンダー平等や労働の価値に関する議論が活発化しており、シャドウワークの評価もその一環として注目されています。
家事や育児といった伝統的に女性が担ってきた役割が、経済的な価値としてどのように評価されるべきなのか。

「シャドウワークは、賃金労働に依存しない自立した生活様式を可能にするものであり、消費社会や資本主義の支配から解放される道を示している。」
シャドウワークを評価することで、多様な価値観やライフスタイルを尊重することができます。
また、シャドウワークは、家庭や地域の絆を強めて、人間の尊厳や幸福を高めることにも繋がっています。

しかし、シャドウワークの肯定には問題点もあります。
それは、善意の労働を一律に経済的な価値や社会的な地位に還元しようとすることです。

つまり、内発的な動機や目的を無視して、シャドウワークの質や量に応じた差別化や階層化を生み出す可能性があるということです。

「労働を評価することで、シャドウワークを行う人々に対して外部からの圧力や期待がかかり、その自由度や創造性が失われる可能性があるのではないか?」
シャドウワークは、賃金労働とは異なり、自発的・自主的・自律的に行われることが多い労働です。
また、評価によって、賃金労働に比べて低い報酬や待遇でシャドウワークを行わせることが正当化される可能性もあります。

しかし、シャドウワークの重要性や困難さを認めないことによる問題点。
それは、影の功労者を無下にすることで社会と家庭の隙間が埋まらなくなることです。

つまり、誰かの喜びのために何かをしなくなるということは、あらゆる関係性や紐帯を壊していく恐れがあります。

では、ここで一緒に考えて頂きたいことがあります。
「シャドウワークに生産性を求めるべきなのかどうか。」
あなたはどう思いますか?

「社会的な課題や困難に対処し、社会的な絆や信頼を構築する有意義な労働が存在する。」
例えば、ボランティア活動です。

しかし、これらの労働は無償で行われることが多く、その貢献や効果が評価されにくいことがあります。
時には、承認欲求が得られないという理由でボランティア活動を辞めてしまう人もいます。

では、ボランティア活動を社会的に認める文化や制度を整備すること。
それにより活動に参加する人々のモチベーションや能力を高めるべきなのでしょうか。

あなたはどう思いますか?

「家庭内の問題を未然に防ぎ、家族の絆と居場所を守る素晴らしい労働がある。」
例えば、家事や育児です。

では、家事手当や育児休暇などの経済的なインセンティブを与える家事や育児をするべきなのでしょうか。

確かに、報酬に見合う労働として認められるようになるかもしれませんが、同時に、そこには対価に見合う責務が発生されます。

そして、善意が自分の選択や喜びではなく、社会から期待される義務や責任として感じられるようになるかもしれません。

「シャドウワークを評価するためには、生産性を示さなければならない。」
評価されるためには結果が必要となり、対価を得るためには責務が必要となる。
生産性を求めようとすれば、お互いに大きな制約が生まれそうです。
本当に、無償の労働、善意の労働にインセンティブは必要なのでしょうか。

私は、シャドウワークとは贈与だと考えています。
贈与は、贈る・受け取る・返礼するという循環があります。

そして第一歩として、気付くが必要です。

「気付かない・気付けない・気付かれないをどう克服するのか。」
あなたなら、気付くためにどうすべきだと思いますか?


※シャドウ・ワーク とは ※集まる場所が必要だ-孤立を防ぎ、暮らしを守る- ※社会関係資本 とは

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