次世代継承学

【第87話】欲望をコントロール出来ない消費者たち。

「消費者マーケティングをすれば物は売れるけれども、売れたものにどんな資源消費があって、売れるために何を失っているのかはまるで分からないようになっている。」
企業のブランディング施策を担当されている方とお話をした際に、消費構造について考えさせられる言葉を頂きました。

「消費者はコストパフォーマンスを重視し、安価な商品を求めている。」
経済的な制約や価値観の変化により、低価格での商品提供が重要だという意見があります。
低価格での提供を支持する層が増えているのだから狙わない手はないと。
市場の流れに身を任せるべきなのだと。

「消費者は品質を重視し、価格よりも商品の質を優先する。」
長期的な視点で見ると、品質の高い商品の方が経済的にも合理的だという意見があります。
品質を重視する消費者の存在も無視してはいけないと。
継続的な関係性が大きな利益をもたらすのだと。

消費者は、自分の生活の質を高めるために商品やサービスを購入します。
安価な商品を求める消費者は、コスパを重視し、安価な商品を提供する企業やプラットフォームに購買を集中させる傾向があります。

「安価で多様な商品を提供出来れば、若年層を中心に認知度や人気を高めることが出来るだろう。」
所得水準や生活費の上昇、物価の変動などによって、消費者は節約志向が続いています。
例えば、その流れに乗ったSHEINやTEMUは、ファストファッションのブランドとして、欧米や日本の市場で高いシェアを獲得しています。

また、中国のECサイト各社は、10月から予約販売を含めたセールス期間の販促文言は「最安値」を中心としていました。

「水は低きに流れるように、人の心もまた低きに流れる。」
しかし、それは、水のように価格の安いものに永遠に天下りしていくようなものです。

つまり、企業にとって見れば、LTVが上がりにくいものと言えるでしょう。

「自分の好みや価値観に合った商品サービスを選び、その品質や機能に見合った価格を支払いたい。」
商品の安全性や信頼性、環境への配慮などを重視し、ブランドやメーカーの社会的責任や信用を評価する顧客層もいます。

彼らは、商品の製造過程や原材料の由来、企業の社会的責任などにも関心を持ち、エシカル消費や環境に優しい消費を好むと言われています。
そして、理念やブランドメッセージにまで目を通して、お眼鏡に叶う企業から購入するため、LTVが高い傾向にあります。

「自分の満足度や幸福感に与えるポジティブな影響を過大評価している。」
しかし、品質や機能に対する過剰な要求や自分の価値観を他者に押し付けることは、消費の多様性や自由を損なう可能性を孕みます。

つまり、自分の消費行動の本当のコストとベネフィットを正しく評価していない可能性があるということです。

消費者は、自分の利益や快楽を最大化するために消費しますが、本来、自分の消費が他者や社会に与える影響にも配慮しなければなりません。

しかし、この二つの目的は、必ずしも両立しません。

「消費者は、自己中心的な欲望と社会的な責任の間でジレンマに陥る。」
消費者は、自分の欲望を制限することで社会の利益に貢献することができますが、その場合、自分の利益や快楽を犠牲にすることになります。
逆に、消費者は、自分の欲望を満たすことで自分の利益や快楽を最大化することができますが、その場合、社会や他者の利益を損なうことになります。

このジレンマは、過去の歴史的な事象にも見られます。
例えば、産業革命の時代には、工業化や都市化によって、人々の生活水準や消費水準が向上しました。
しかし同時に、環境汚染や労働問題、社会不安などの問題が発生しました。

また、冷戦の時代は資本主義と共産主義の間で、消費社会のモデルが対立しています。

資本主義の消費社会は、自由な市場や競争によって、消費者の選択肢や幸福感を高めることを目指しました。
しかし同時に、消費の過剰や不平等、資源の浪費などの問題を引き起こしました。

共産主義の消費社会は、計画経済や公平な分配によって、消費者の基本的なニーズや社会の安定を確保することを目指しました。
しかし同時に、消費者の自由や創造性、個性などを抑圧しました。

「消費者のニーズを満たした上で、社会の課題を解決に導く。それが欲望のコントロールではないだろうか。」
つまり、それは、持続可能な消費構造を作り上げるということです。

ではそのために、私たちに何が出来るのでしょうか。

例えば、企業は環境に優しい素材や技術を用いて、省エネルギーやリサイクルなどの特徴を持つ商品やサービスを開発することができます。
また、消費者に対して、自社の商品やサービスの持続可能性に関する情報を透明に開示し、消費者の信頼や忠誠を得ることが出来るでしょう。

そして政府は、消費者に対して、持続可能な消費の重要性や方法について教育や啓発を行う。
また、消費者が持続可能な商品やサービスを容易に選択できるように、消費のラベリングや認証制度などの仕組みを整備する。
さらに、持続可能な消費を促進するために、消費に関する税制や補助金などの政策を実施する。

消費者、企業、政府が協力して、持続可能な消費社会の実現に向けて努力する余地はまだまだあります。
私は、そのためにはマーケティングで得られる消費者ニーズを一度無視してナーチャリングを行う必要があると考えています。

その取り組みが、消費者の幸福感や満足度を高めるとともに、社会や環境の問題を解決することにつながると信じています。


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コメント

  1. AYA

    消費者には知ろうとする気持ちが少ないと思います。
    受動的であるので「なぜこの商品、会社はこんなに安くものができているんだろう」と疑問を持つよりも先に、「何かしら企業努力で安いんだろう、嬉しいな。安い分、たくさんのものを選べる!」くらいにしか思っていないと思います。

    企業ももっと適切に自分たちの活動を知らせるべきかと思います。
    SDGsだと掲げているので、なんとなく消費者に好印象を与えられるかな?という態度くらいに感じます。
    なぜそれが問題になっているのか、実際にどのような負の側面があり、改善しようとしているのかを伝えないと消費者も興味を持たないと思います。

    貧しい環境の中に生きていると、物事を楽観的にみて負の側面を見ようとしない場合があるのでしょうか?
    例えば、食品添加物は体に良くないと大体の人が認識していますが実際に体にとり入れることを避けている人はかなり少ないと思います。

    貧しい状況だからこそ能動的な消費の仕方を知るべきだと思いました。

    • 青木コーチ

      コメントありがとうございます!

      「貧しい環境の中に生きていると、物事を楽観的にみて負の側面を見ようとしない場合があるのでしょうか?」
      この言葉が印象に残りました。

      「理解なんてものは、概ね願望に基づくものだ。」
      人間は目の前の事実、情報を正しく把握しているようで、実はしていない。
      つまり、理解をしているのではなく解釈をしているのに過ぎないということです。

      そして現代では、自己責任論を中心に独善的な行動を肯定する風潮があります。
      自分さえ良ければ良いのだと。

      また、企業は原価が上がったのに企業努力と称して値上げをしてこなかった。
      原価が上がったのなら、素直に値上げして、物価に応じて給料を上げるべきだったという意見もあります。

      自己保身に走ると中長期的な関係性にヒビが入ること。
      それが身に沁みて分かる日が来るのかなと。

      そんなことを考えさせられました。

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