次世代継承学

【第9話】見えない棘と抜けない棘

「変革は元来、支持されません。なぜなら人々は皆、現状維持を好むからです。だからこそ、変革をする場合は、何度もくり返し説明しなければなりません。」
ゼネラル・エレクトリック社の元CEOジャック・ウェルチ氏は、変革と維持について考えさせられる言葉を残しています。

「変革は成長のために必要だ。」
変革は組織や個人の成長のために不可欠であるという意見があります。
現状維持を続けると、時代の変化に取り残され、競争力を失う可能性が高まる。
もちろん変革にはリスクが伴うが、それを乗り越えなければそもそも現状維持さえもままならない。

つまり、現状を維持するためにはそもそも変化が必要だということです。
このように、現代の風潮は変革推進派が主流のようにも感じられます。

「変革は不要であり、伝統を守ることが最善だ。」
一方で、変革は多くの場合、不安や混乱をもたらします。
新たなシステムや方法に慣れるまでの間、生産性が低下することが多い。
また、変革が成功する保証はなく、失敗した場合のリスクは歴史と遺産の消失です。

往々にして伝統とは、本質の積み上げであり、大いなる意味を持つ。
つまり、伝統に習えばどのような潮流にも動じない対応が出来る。
その意味では、維持するための選択が最善であるという意見もあります。

あなたは変革と維持、どちらが好みですか?

「昔のほうが良かった、それは改悪だ。」
SNSアプリのInstagramは、ある時ロゴを変更しました。
この変更に対して、インターネット上では賛否両論の意見が飛び交いました。

多くのユーザーは新しいデザインに対して否定的な意見を持ち、変更前のデザインに戻すことを要求しました。

なぜユーザーは不満を持ったのでしょうか。
それは、すでにロゴに馴染み、そこに愛着を持っていたからです。

また、Facebookのタイムライン導入も大きな変革の1つでした。
こちらも多くのユーザーから反発を受けました。

しかしながら、InstagramもFacebookも気まぐれで変更したわけではありません。
ユーザーの利益を考慮したものであり、変革はユーザーの使用体験を向上させることを目的としていました。

そして現在では、狙い通りに変革がユーザーの利益になっていると結論付けられています。
つまり、時間が経つにつれてその変更の意義が理解され、受け入れられるようになったということです。

「変化も、環境も、成長も、変わる瞬間には痛みが伴う。」
痛みとは不利益不都合です。
変革も維持も、必ずしも即座にポジティブな反応が得られるものではありません。
それこそ、愛着や親しみがあればあるほど痛みは激しさを増していきます。

しかし私は、問題はそれだけではないと感じました。
つまり、そこには”見えない棘”のようなものが存在しているのではないかと考えました。

「変革と維持には背景がある。」
背景とは動機です。
変革の背景には、何かの成長や追求という動機が隠れています。

「心の棘は疎外感から生まれる。」
しかしながら、動機を知らされず進捗すると人は疎外感を覚えていくものです。

「私を無下にするな。」
SDGsがあれだけ声高に”誰ひとり取り残さないこと”を提唱していたのには訳があります。
つまり、速やかに動機を隠して実行すると、見えない棘が引っ掛かり返って遅くなるということです。

一方で維持は蓄積によって理解が得られるため、見えない棘がないようにも感じます。
しかし、そこにもリスクが隠れています。
そのリスクとは、万能感という名の思考放棄です。

私はそれを”抜けない棘”と呼んでいます。

つまり、それは、”万能感が危機感を鈍らせていく”ということです。
では、そもそも万能感という幻想はなぜ生まれているのか。
私はそれを、考えることに疲れた結果だと考えています。

「人間は考えることに疲れると、楽に流されていく。」
では、何がそうさせているのでしょうか。

私は、経済社会がそうさせているのだと考えました。

「すべてのビジネスは、何かを楽にすることに繋がる。」
需要先行ではなく、そもそも供給が先行です。
楽にさせるために何かを提供しようとするから、人は楽になりたがる。
なぜなら、楽になることが幸せだと思わされているから。

「汗をかくな、無理をするな、楽になれ。豊かさとは時間である。」
それが経済における時間の正体だと考えられます。

「私たちは、見えない棘を生み出して、抜けない棘を刺されている。」
未来における変革と維持の判断基準とは何か。
そして、私たちは心に何を携えて行くべきなのでしょうか。

あなたは、どう考えますか?


※ジャック・ウェルチ とは ※マーク・ザッカーバーグ とは ※SDGsをより深く知りたい

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