次世代継承学

【第63話】持続可能な運営をするための必須条件

「国立科学博物館がクラウドファンディングで集めた約9.2億円のうち、READY FORに1億円以上の手数料が支払われるらしいのですが、これってどう思いますか?」
知人と世間話をしている際に、クラウドファンディングの良し悪しについて考えさせられる話題を頂きました。

「クラウドファンディングは新しい資金調達の手段だし、多くの支援を集めることができたのはこのプラットフォームのおかげだと思う。」
資金調達に対する手数料はサービス提供者の利益として正当だという意見があります。
サービス提供者は広告宣伝費を使い、リスクを負っているため、手数料を得ることはビジネスとして当然であると。

「純粋な寄付の方がより多くの資金を直接的に運営に充てることができるのではないか。」
一方、手数料が高額なのではないかという意見があります。
より多くの資金が科学博物館の運営に直接寄与されるべきだと。

この手数料は、資金調達の成功に対する報酬として妥当なのか。
それとも過剰な「中抜き」と見なすべきなのでしょうか。
あなたはどう思いますか?

このような対立が起きる理由は何か。
それは、新しいビジネスモデルに対する理解の差。
そして、公共の利益に関わる資金の使い方に対する倫理的な観点の違いにあると考えます。

「寄付文化が薄い日本において、科学博物館が独自で寄付を募る活動をした場合、9億円もの資金を集めることは困難だったのではないか。」
クラウドファンディングの存在が、大きな資金を集めることを可能にしたという点で、その価値は認められるべきです。

■クラウドファンディングの利点は下記3点に集約されます。
1.研究効果 顧客分析を兼ねたテストアプローチが可能
2.調達効果 資金調達の手続きがVCや銀行を通すよりも簡単
3.販促効果 周知集客を兼ねたアプローチが可能

■またその欠点は下記4点に集約されていきます。
1.条件次第で手数料が高額になる場合がある
2.プロジェクトが失敗した場合ブランディングに悪影響
3.競合に自分のアイデアを知られるリスクがある
4.リターンが大きすぎると資金繰りが悪化するリスクがある

「手数料が約1割として、集まった支援金が100万円なら手数料は10万円、1000万円なら100万円となり、このぐらいまでだったら納得感はあった…」
今回のように9億円ともなれば、比例して手数料も高額となります。
第三者から見れば、公共施設に法人が絡んで中抜きしたと見えても仕方ない額だとも言えるでしょう。

これを払拭するには、合計支援金に段階を設けて手数料のパーセンテージを変えること。
つまり、上限を設けるなどのプライシングについて検討される余地があるということを考えさせられました。

ではここで一緒に考えて頂きたいことがあります。
「持続可能な運営はどうすれば実現出来るのでしょうか。」
あなたはどう思いますか?

「勇者の人生は、姫を救い出して凱旋パレードをした後からが本番です。」
私たちはつい、クラウドファンディングが成功すれば後は上手くいくだろうと思ってしまいがちです。
しかしそんなことはありません。

過去にも他の美術館や博物館が資金難に陥った時、新たな資金調達が実施されて来ました。
例えば、貴重品の売却(オークション)や収入源の固定(サブスク)、特別展の開催(会員限定)です。
借り換え融資も言い方を選ばず言えば、延命処置に過ぎません。

これらの方法は短期的な成果は見込めます。
しかしなぜか持続されません。

それはなぜなのでしょうか。

「クラウドファンディングで大成功したとしても、公共の利益とビジネスの利益を分けて考えることが出来ないと長くは持たないんですよね。」
過去にお酒で目標金額を達成した実行者が語られていました。
そして大切なことは中長期的な運営計画なのだと。

「次の1年間をどうやって資金繰りしていくのか。」
資金を集めたとしても、年間計画が無ければどこかで行き詰まるのだと。

つまり、持続可能な運営とは、綿密な計画があって初めて成立するものだということです。

そしてビジネスだけでなく、公共に還元が出来なければ二回目の成功はありません。
支援されたとしても、それはプロダクトに対する利害の支援です。
つまり、ファンダムコミュニティが生成される余地があるかと言えばそれは難しいということです。

「資金調達でいくら集めようが、ジリ貧になる根本原因を改善する施策が無ければ付け焼き刃に過ぎない。」
中長期的な経営計画を描くことは気恥ずかしさも相まってやらない人が多いです。
でも、やるべきなのだと改めて思わされました。

あなたは、持続可能な運営をするためにどんなことをされていますか?


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