次世代継承学

【第14話】助けを求めることは依存の始まりですか?

「芸能事務所はタレントを育てて商品化して来たが、近年はタレント自身が独立して案件管理まで出来るため、芸能事務所の存在意義と価値が見えなくなってきているのではないだろうか?」
こちらは、ある芸能プロダクションの関係者から頂いた言葉です。
これからの事務所の在り方について考えさせられました。

「事務所はタレントの安全を守るための存在であり、独立することで多くのリスクが増える。」
事務所がタレントとメディアの間で発揮する介在価値は無視できないという意見があります。
それはメディエーションの立場から、双方の利益を最大化すると同時にリスク管理も合わせた価値を提供しています。

例えば、ブランディング、契約交渉、スケジュール管理は誰でも出来る雑務ではありません。
関係者たちと価値交換を促進するための、一つひとつに上質が求められる行為です。

「タレントは自らの意志で活動すべきであり、事務所の束縛から解放されることで、真のクリエイティビティが発揮される。」
一方で、制約と誓約がタレントの可能性を抑圧しているという意見もあります。
SNSの普及やデジタル技術の進化は、各タレントが自己プロデュース出来る環境を生み出しました。
それは、業界内において、中間業者の役割が縮小する現象を指すディスインターメディエーションが加速していることを意味しています。

実際に近年、タレントが事務所を離れて独立することが増えて来ました。
そして、事務所を通さずに独自に活動を展開するタレントも増えて来ました。

「当初、予定していた内容と全然違うものになっていた。」
しかし脱事務所は円満な結果だけを生み出しているわけではありません。
そこには、事務所やクライアントとの契約内容や報酬の不透明さ、方針に対する不満など、多くの問題が隠されています。

一言で言えば、各自の持つ魅力が最大化されず、価値が半減されるような綻びが生まれています。

しかし、ここであなたにも考えて頂きたいことがあります。
なぜ、タレントは事務所を頼らず自力で歩む道を選び始めたのでしょうか?
それは単なる無知蒙昧な若気の至りなのでしょうか。

あなたはどう考えますか?

タレントは単なる商品ではなく、独自の価値を持つ存在です。
事務所とは、その価値を最大化するためのパートナーです。
最大化された価値は、クライアントが求める上質な価値である必要があります。

「各自が何かを求めるのは良いことだけど、それは誰の何のためなのだろうか?」
タレントは自由と権利を獲得したい。
事務所は利潤と安定を求めたい。
つまり、双方が何かを求める心には、顧客や社会をより善くするという意志が宿っているのでしょうか。

「原石を掘り出して、磨き整えて、世に送り出す。」
時には、”売れるため、儲けるためのやりやすさ”を提示し合うことが必要です。
しかし本来、タレントと事務所の関係はビジネスを越えた関係であるべきだと考えます。

つまりその関係は、共同で価値を創造するパートナーシップであるべきだということです。

「自由にしていいから結果を出せ。出せないなら従え。」
舐められては廃ると考えた事務所とメディエーションの凄味を知らないタレント。
おおよそ、自己責任論を軸としたチキンレースが働いた結果なのかなと思わされました。

自己責任論を全う出来ないから、誰かを頼る。
それは共存と依存、どちらなのでしょうか。

「自立は善、依存は悪。助けを求めること自体が依存だ。」
ある観点から見れば、そのような意見も出るでしょう。
しかしながら、私はこの問題の根深さは別な部分にあると考えました。

そもそも、誰かに頼ることはそんなに悪いことだったのでしょうか?

「身近な人は助けよう。でも、頼るなんて情けないことするな。」
どちらも正当化されているような気がしてなりません。
しかしこのように、”素直に人を頼り助け合うことさえも難しくしてしまった”のは私たち自身です。
つまり、ここには合成の誤謬が起きているのだと考えられます。

もし仮に、タレントはやり場のない相談できない苦しみを抱えていて。
事務所は気概の感じられないタレントに嫌気が差していて。
つまり、それが関係を破綻させていて、その結果が今の脱事務所論を招いていたのだとすれば。

再起のためには、タレントと事務所が共同でビジョンや目標を設定し、双方の役割や責任を明確にすることが必要だと考えます。
しかしそのためには、頭の下げ方を知るタレントが必要です。
そして、人に寄り添える事務所もまた必要です。

或いは、そこには新たなメディエーションが必要なのかもしれません。
では、それは誰なのか。
そして、どう導かれていくべきなのでしょうか。

あなたは、どう考えますか?


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