次世代継承学

【第70話】囚われた天使の歌声ゼノギアス

「スーパーマリオRPGがリメイク発表された瞬間、冗談じゃなく走馬灯が見えた。昔いた自分の部屋、匂い、お母さんの声、生活音、すべてが蘇った。無意識に涙が出ていた。」
ポケモンの大会で4位に入り、ゼノギアスで世界を学んだと豪語するゲーム愛に溢れた知人とお話した際に、ゲームの未来について考えさせられる言葉を頂きました。

「最先端技術を駆使して新しいゲーム体験を提供することに重点を置くべきだ。」
技術の進歩がゲームの進化を牽引するという意見があります。
技術革新はゲーム業界を常に前進させ、プレイヤーに新しい体験を提供するのだと。

「消費者のニーズや嗜好を反映し、よりターゲットに合わせた製品を生み出すべきだ。」
市場調査に基づいて開発されるべきだという意見があります。
市場の動向と消費者の好みを理解することで、より成功しやすい製品を開発できるのだと。

技術革新に基づくゲーム開発か、それとも市場調査に基づく開発か。
あなたはどちらを支持しますか?

「ゲームは常に新しい楽しさを開発し、ひたすら完成度を高めていくことが本質である。」
ファイナルファンタジー7が発売された当時の衝撃。
それは、3Dポリゴンの立体的な世界観が本物そっくりに見えて、高精細な映画を見ているような体験です。

記憶に新しい例で言えば、SONY『Marvel’s Spider-Man』 は、仮想空間に完全なニューヨークの複製世界を作り上げて大ヒットしました。
伝説の作品『シェンムー』のようなオープンワールドゲームは最新技術によって日進月歩でユーザーを驚かせてくれています。

「まだ世の中に無いけど、見たら欲しくなるものを提供する。驚きと興奮が喜びを呼び覚ますんだ。」
ソニーはPlayStation VRやPlayStation 5など、野心的に最新技術を取り入れて他の追随を許さない圧倒的な没入感や臨場感を追求しています。

また、マイクロソフトは、母体主力事業の技術を駆使してクラウドゲーミングサービスのXbox Cloud Gamingを提供しています。
それは、今後Steamを凌駕したいという野心が見え隠れしていることが伺えます。

つまり、それは、最高の技術による最高の製品は、目の前に出た瞬間に需要を喚起させる力を持つのだと考え捺せられます。

しかし技術革新に基づくゲーム開発には欠点があります。

それは、開発に多額の投資や人員が必要になり、ゲームメーカーの経営が危機に陥る可能性があることです。
また、ゲームの高精細化や没入感の強化が、ゲームの中毒や現実逃避、暴力や犯罪などの社会問題を引き起こす可能性もあります。

「ゲームは消費者のニーズや嗜好を反映し、よりターゲットに合わせた製品を生み出すことに焦点を当てるべきだ。」
任天堂は、ゲームの定義を閉じ籠もった空間で一人でやるものから、ファミリーで会話のきっかけにするものに再定義しました。

そこで生まれたのがニンテンドーWiiでした。
旧機種のニンテンドー64は、3Dポリゴンを駆使したプレイステーションとの対抗機種という印象がありました。
しかし任天堂は、ニンテンドーwiiで新たな需要を創出することを選びました。

「市場調査によって得られたデータやフィードバックをもとに、幅広い層に受け入れられるゲームを開発する。」
その狙いは、残念ながらwiiでは外れました。
しかしその取組みは、後継機種Nintendo Switchの大ヒットに繋がりました。
コロナ禍における『どうぶつの森』の爆発的な売上記録は記憶に新しいです。

また、スクウェア・エニックスは、市場調査によって得られた海外市場の傾向やニーズを分析し、グローバル展開を攻めています。
ファイナルファンタジーは落ち目だと揶揄されることもありますが、ファイナルファンタジー14は世界を巻き込む大ヒットを記録しています。

つまり、それは、必ずしもハードとソフトの性能が売れる基準ではなく、需要から刺激を創出する力が重要なのだと考えさせられます。

しかし市場調査に基づくゲーム開発にも欠点があります。

それは、ゲームの開発に市場の動向や消費者の意見が過度に影響し、ゲームメーカーの独自性やビジョンが失われる可能性があることです。
また、ゲームのニーズや嗜好の追従や模倣が、ゲームの品質や価値の低下や、ゲームの飽和や倦怠などの市場問題を引き起こします。

「ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上が大切なのではないか。」
UXとは、製品やサービスの利用を通してユーザーが感じる使いやすさ、感動、印象といった顧客体験のことです。

例えば、スマートフォン市場におけるiOSとAndroidの競争は、UXを反映しています。
iOSはユーザーエクスペリエンスを重視することで、高付加価値な製品というブランディングで確固たる地位を築きました。

「これからは、カスタマーエクスペリエンス(CX)の時代が来るのではないだろうか?」
CXは、(製品・サービスとの)出会いからアフターフォローまでの顧客体験全般のことです。
UXがゲームを通して得られる体験に留まるのに対して、CXはゲームを知って買って体験してレビューして、という全体験を包括したものです。

「ゲームは子どもの遊びだ。」
任天堂がまだ花札を作っていた時代。
ゲームは大人がやるようなものじゃないと言われていました。

それが、今では大人が率先してやりたがるものになりました。

ゲームメーカーの理念や戦略、ゲームユーザーの嗜好や期待、ゲーム業界の環境や競争。
ゲームメーカーの創造性や感性、ゲームユーザーの感動や共感、ゲーム業界の文化や伝統。

あらゆるものが意味連関して、ゲームはゲームの価値を塗り替えて今に至ります。

「ゲームでお金を投資して、ゲームでアイテムを売買して、ゲームで生計を立てる。ゲームは生活の一部になる。」
もしかしたら、NFT業界と連携を強化することで、ゲームによる生活経済圏を作り上げる未来だって考えられます。

「ゲームは忘れられた過去の世界を現代に蘇らせて、人の外部記憶装置の一つとして唯一無二の存在となる。その時、ゲームは芸術品となるのだ。」
もしかしたら、デジタルツインやXR技術と連携して仮想世界を生み出す可能性もあります。
メタバースは世界的なSNS会社が作るものではなく、メタバースはゲーム業界から普及するなんていう未来だって考えられます。


※スーパーマリオRPG 星空からのおくりもの ※漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち ※スクウェア公式ゼノギアス設定資料集

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コメント

  1. AYA

    わたしはゲーマーじゃないので、あまり詳しくないですが、ゲームは何事も忘れてその世界に没入できるイメージがあります。その結果何時間も集中してやっちゃうイメージです!私が小学生の時に任天堂DS liteが流行っていて、マリオのゲームを友達と一緒に夢中になってやってました。すごく盛り上がるし楽しかったです!公園の鬼ごっこも楽しいですがまた違う楽しさでした。

    ゲームがそんなに好きでない人からすると現実逃避、のような良くないイメージもありますが、現実逃避が必要な人たちにとっては救いになってる場合もあると思います。

    現実の問題から解放されて楽しむ時間が必要な人にとっては必要なものだと思うし、ゲームの世界でだけで人間関係を作っている人たちや、ゲームがきっかけで現実世界で繋がれる人たちもたくさんいます。そういった、救いの時間の提供がゲームの価値かと思います。
    SF映画にあるような現実との境がわからなくなる感じは怖いですけどね!

    • 青木コーチ

      いつもありがとうございます!!

      「マリオのゲームを友達と一緒に夢中になってやってました」
      これが印象に残りました。

      スティーヴン・スピルバーグ『レディ・プレイヤー1』という作品があります。
      近未来を描いたSF映画です。

      自らの姿をアバターに変え、さまざまな理想を叶えることのできるVRの世界「オアシス」。
      その創設者の死後、オアシスの3つの謎を解いた者に莫大な財産とその仮想世界を譲るという遺言が発表される。
      そして全世界を巻き込む争奪戦に、17歳の少年が挑む。

      という物語なのですが、日本のアニメ文化が広く取り入れられています。
      マリオカートのようなレースも展開されています!

      この映画の世界観は、現実と仮想がほとんどリンクされた世界です。
      そのような世界観を正確に表現する言葉が無かったので、私は「実相社会」と名付けて語らせて頂いています。

      実相社会においては、仮想世界で得た資金は現実ともリンクされています。
      ちなみに17歳の主人公は、VRではそこそこな身なりですが、現実では貧しい生活を余儀なくされています。

      息抜きをするためのゲームだったが、現実とリンクすることで遊びが遊びじゃなくなってしまった。
      そんなダークな側面も内包しているのがこの作品の奥深いところだと思っています。
      久し振りにまた見たいと思えて来ました。

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