次世代継承学

【第69話】その炭素、ウチの国で買い取りますよ。

「持続可能な経済成長は理想的な目標だけど、その実現可能性には疑問があります。世界の分断に歯止めを掛けられていないのが現状です。」
環境問題に取り組むNPOを展開されている方とお話をした際に、環境問題と世界の関係について考えさせられる言葉を頂きました。

「気候変動は待ったなしの状態であり、脱炭素政策は地球の未来を守るために不可欠だと考える。」
気候変動の深刻な影響を指摘し、脱炭素化を急ぐべきだという意見があります。
再生可能エネルギーの導入拡大や、持続可能な生産方法への移行を推進すべきだと。

特に、先進諸国にとっては経済成長よりも地球温暖化が大切と考えます。

「脱炭素を目指す必要性は分かるが、経済的な弱体化に繋がる可能性は看過できない。」
一方、脱炭素政策が経済成長に悪影響を及ぼす可能性は見過ごせないという意見があります。
産業空洞化や雇用の減少、エネルギー安全保障の問題を指摘し、より現実的なアプローチが必要だと。

特に、発展途上国にとっては地球温暖化よりも目先の経済成長が大切と考えます。

「この対立の根底には、環境と経済の持続可能性に対する異なる視点がある。」
2015年、持続可能な社会を築くために、国際連合からSDGsが提言されました。
しかし根本的に、資源問題には二律背反の側面があります。

「産業革命以後、この世界は資源エネルギー無しには成立しない世の中になった。」
持続可能な社会を築くために必要なのは、環境か経済か。
共通しているのは、そのために資源エネルギーが必需品だということです。

私たちの生活は、資源が無ければ成立しません。
資源の中には、GHGをたくさん排出するものとそうでないものがあります。

「石炭が一番GHGを排出するが、発展途上国は安くて大量に余っている石炭を使いたい。」
しかし、先進諸国はその姿勢を批判します。
地球のことを考えるべきだと。

「地球が住めない場所になってからでは遅い。GHG(温室効果ガス)を排出しないエネルギーを使うべきだ。」
しかしながら、地球温暖化を招いたのは先進諸国です。
発展途上国からすれば、先進諸国は100年以上環境を犠牲に発展するだけしてから自分たちに規制を求めているように聞こえるのです。

つまり、その食い違いが大きな根源だということです。

だから、環境を優先すべきか、それとも経済優先かで意見がまとまらない。
こうして世界は今、分断状態にあります。

世界各国は、カーボンプライシングという政策を進めています。
それは、温室効果ガスである炭素(CO2)に価格を付ける仕組みです。

つまり、炭素に価格を付けることで、排出量に見合った金銭的負担を企業などに求めるということです。
これにより、排出者の行動変容を促そうという意図があります。

例えばこの仕組みを世界規模で行っていく。

各国が排出削減目標を定める。
到達出来なかった場合には罰則規定を設ける。

「うちの国で、その炭素を買い取りますよ。」
その上で、到達出来ない分(削減が見込めない分)は金銭授受を通して、取り組みが進んでいる国に買い取ってもらう。
そんな仕組みがあれば排出削減に向けて公平感のあるアプローチが出来るかもしれません。

「技術革新が両者の関係性を変えていくのではないか?」
また、技術の進歩によって先進諸国と発展途上国の間にある差を縮めることも期待されています。
例えば、ガソリン車よりも電気自動車の方が性能もコストも優れた製品になる可能性です。

電気自動車と言えば、フォード全盛の時代から発明されていました。
しかし、バッテリーが貧弱だったためにフォード車のようにどこにでも行けるようなものではありませんでした。
そのため、買い物に出掛ける富裕層の女性をターゲットしたのですが、販売台数は伸び悩み、市場は衰退しました。

21世紀に入り技術が追い付いて来たタイミングで、イーロン・マスク氏はTESLAで電気自動車を華々しく復活させました。

EV車(電気自動車)を量産するために大規模な生産施設が必要となります。
そこで誕生したのが、脱炭素化と電動化に関連する部品や製品(特に電気自動車向けバッテリー)を生産するギガファクトリーです。

では、例えば排出削減目標を達成している国がギガファクトリーを設立する場合には、資金を援助する。
その原資は、罰則規定で徴収したお金で賄う。
雇用活性化施策、経済産業発展施策としても、補助金を受ける側にとっては悪くない話です。

とはいえ、これらの技術革新は環境問題に対する新たな解決策を提供しましたが、同時に新たな問題も生じさせました。
それが電気自動車のバッテリー廃棄問題や、太陽光パネルのリサイクル問題です。

あちらを立てればこちらが立たずですよね。
しかしながら、答えのない問題を克服して行くために、私たちはアプローチを続けるしかありません。


※環境問題についてより深く知りたい ※カーボンニュートラル とは ※脱炭素ビジネスが世界経済を動かす

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