次世代継承学

【第108話】SPAモデル vs 分業モデル

「SPAは、サプライチェーンの利益を総取りし、効率化を図ることができる一方で、在庫リスクや広範なノウハウが必要というデメリットもあります。」

海外で活躍されているアパレルメーカーの方とお話をした際に、アパレル業界の業態について考えさせられました。

■「企画から販売まで自社完結すれば最効率を生む。」

  • 意見1: 効率的なサプライチェーン管理によるコスト削減が期待できる。
  • 意見2: 市場の変動に迅速に対応し、消費者ニーズに合わせた商品が提供可能。
  • 意見3: 直営店との連携による強力なブランディングと販促活動が出来る。

■「多彩な企業と連携することがより良い価値を生む。」

  • 意見1: 多様な企業が参入しやすい市場環境の維持が期待出来る。
  • 意見2: 小規模メーカーや地域ブランドの保護が業界の底上げに繋がる。
  • 意見3: 消費者に多様な選択肢を提供し、市場の健全性を保つことが重要だ。

■SPAモデル

  1. 目的: 効率的なサプライチェーン管理を通じてコスト削減と迅速な市場対応
  2. 建前: 消費者ニーズに合わせた商品の迅速な提供
  3. 本音: 市場支配力の強化と高い利益率の確保
  4. 信条: 垂直統合による効率的なビジネスモデルの追求

■分業モデル

  1. 目的: 多様な企業が参入しやすい市場環境の維持と地域ブランドの保護
  2. 建前: 市場の多様性と競争の健全性の維持
  3. 本音: 既存のビジネスモデルと市場地位の保持
  4. 信条: 多様な企業間の協力による市場の健全な発展

■理想と現実の間

「購入前に感じる気持ちと購入後に感じた気持ちには、何か大きな喪失感があるような気がしてならない。」
物を買う時、私たちは巧みなマーケティングで感情を揺さぶられます。
買おうと思っていなくとも脳裏に焼き付いた何かが頭の中で反芻されていつの間にか欲しいと思ってしまう。

手に入らなそうな希少性に気付いてしまった瞬間、もう欲望を制御することが出来なくなっていく。
私たちはそんな衝動に駆られて購入するわけですが、購入した後で感じる世界はまるで違っていることが多い。

「え、、、なんで私はこれを買ったのだろうか?」
冷静に考えればもっと比較検討するべきだった、或いは本当に今欲しいのかと問われたらそうでもない。
衝動は、満たされた瞬間多幸感で包まれるが持続することはほとんどありません。

つまり、デジタルマーケティングはギャンブルに近い特性を獲得することで効果性を上げているとも言えます。

製造小売として、一気通貫で顧客ニーズを拾って新たな商品を展開出来る。
それはとても大きな強みである一方で、そのニーズは本当にニーズ足り得るのかという問題が出てきます。

なぜなら、その場の雰囲気や空気感で人間の要望は変わっていくから。
デプスインタビューでさえも取材側の質問事項と引き出し方で結果は大きく変わります。

そう、ニーズの引き出し方に応じて大衆用か専門用かに分けて企画に落とし込んでいく必要があります。
例えば、大衆用の商品企画に使いたいのであれば、時間と場面を想定したニーズの抽出が有効になるというように。

だとするならば、本来SPAモデルはサプライチェーンを見直すことで得られる原価メリットだけではありません。
専門的な視座で特化していくことが出来ることに強みがある可能性があります。

しかしながら初期費用が必要なためどうしても大衆販促に強い大手企業がSPAモデルを採用しています。
もしかしたら今後は、SPAモデルからD2Cモデルで生産されるような趣向特価の専門ブランドに分化するパターンが生まれるかもしれない。

とはいえ業界全体の利益を損なうような動きは、各社の利害調整に大きな問題を生み出します。
また、どうしても在庫を抱えてしまうSPAモデルはいずれ在庫が爆弾に変わる可能性もあります。
要するに需要変化によって在庫が宝から爆弾に変わった時に、また余ったキャベツになっていくということです。

その意味では、SPAがずっと覇権を取ることは無く、ブランド毎に編成ラインを変えるのが現実的かなと。
或いは、中国アパレル企業シーインのように売りたい商品と買いたい顧客をマッチングさせて在庫が捌ける仕組みにするのか。

企業はどうやってブランドとモデルを組み替えて、顧客ニーズに寄り添っていくのか。
そこが、この業界の面白いところだなと感じさせられました。

■乖離を埋めるための事例

  1. GAPのSPAモデル: GAPは「製造 – 小売」の統合を核とし、伝統的な組立ライン生産を追求しています。これにより、効率的なサプライチェーン管理と市場ニーズへの迅速な対応を実現しています。 出典: Atlantis Press
  2. ユナイテッドアローズ: ユナイテッドアローズは、製造から小売までを包括するSPAモデルを採用しつつ、伝統的な流通モデルとのバランスを取りながら、ブランド価値を高めています。 出典: United Arrows
  3. ファーストリテイリング: ファーストリテイリングは、SPAモデルを採用しているものの、伝統的な製造業者との協力関係を維持し、製品の品質と供給の安定性を確保しています。 出典: Fast Retailing
  4. ワールド: ワールドは、もともと卸売業から出発し、1990年代以降SPA型の自社ブランドショップ事業を強化しています。伝統的な流通モデルとSPAモデルの両方を活用しています。 出典: METI
  5. 良品計画: 良品計画は、西友のPB部門が独立した企業であり、SPAモデルを採用しつつも、伝統的な小売業との連携を保っています。 出典: Fast Retailing

■未来を担うべき主体

SPAモデルと伝統的製造モデルの共存を実現するためには、アパレル企業、サプライチェーンのパートナー、市場分析者、および消費者の力が必要です。

これらの主体が協力し合うことで、市場の多様性と競争の健全性を維持しつつ、効率的なビジネスモデルを実現できると考えられます。

■乖離を埋めるための具体的な手段例

  1. 市場分析の強化: 市場の変動に迅速に対応するために、詳細な市場分析と消費者トレンドの追跡が必要です。
  2. サプライチェーンの最適化: 効率的なサプライチェーン管理を通じて、コスト削減と供給の安定化を図ります。
  3. 協力関係の構築: SPAモデルと伝統的製造モデルの間で協力関係を構築し、相互に補完し合うことが重要です。

未来を予測する”きっかけ”を生み出すメルマガ

似たような情報や視点に囲まれてしまう現代社会。
この先もネットの情報はますますあなたに
最適化されていきます。

でもそれで本当に良かったのだろうか?

成功事例の横展開が業界にイノベーションをもたらすように、
身近でない情報が実は突破の糸口になったりする。

共通点を繋ぎ、線と面で捉え直すこと。

それが我々の贈る言葉の特色であり、
情報から光を引き出す編纂技術だと考えています。

考えるきっかけとなるイベント情報や新着記事を
メールでお届けいたします

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA