「大物アーティストとそれ以外のアーティスト間での来日公演の格差が生まれている。一部のファンが待望するアーティストであっても、経済的利益の多寡ですべて足切りされてしまっているのが現実です。」
プロモーターとして音楽フェスを主催している方々とお話をした際に、音楽ライブについて考えさせられました。
「来日公演が開催される、或いは開催して成功するアーティストとそうでないアーティストの明暗は、やはり集客母数に依存する。」
例えば、ブルーノ・マーズやテイラー・スウィフトなどの大物アーティストは成功を収めている一方で、メタリカのようにファンが待ち望むにもかかわらず来日が実現しないアーティストもいます。
そもそも円安の影響により洋楽アーティストの来日公演の経費が高騰している中で、主催側は利益で判断してしまいがちになるのだと。
その話を聞いた時、私は、短期的な経済的利益を超えた価値を生み出す重要性について考えさせられました。
一過性の収益よりも、中長期的な投資対効果を上げるような仕組みを作ること。
それは、音楽というものを芸術と捉えることから始まるのかなと。
「音楽は、単に個人の感性や趣味を満たすだけでなく、社会や文化に影響を与える力を持つ芸術である。」
これについては、1960年代のロック革命と呼ばれる過去の事象から説明が出来ます。
1960年代は、ベトナム戦争や公民権運動、学生運動などの社会的な動乱や変革の時代でした。
この時代に、ロック音楽は、若者の反体制的な姿勢や自由なライフスタイルを象徴するとともに、社会に対する批判や抗議の声を表現する手段となりました。
つまり、ロック音楽は、社会における既存の権威や規範に挑戦するとともに、社会における新たな価値観や思想を提唱する役割を果たしていたと。
また同時に、社会に属する個人や集団のアイデンティティやコミュニティを形成するとともに、社会における多様性や寛容性を促進する役割も果たした。
しかし、ロック音楽の社会的役割と表現の自由は、必ずしも肯定的に受け入れられたわけではありません。
「ロックはけしからん。暴力や薬物、性的な乱れを促進している。」
ロック音楽は、社会における既存の秩序や道徳に反するとして、社会の保守的な勢力や権威からの弾圧や批判にさらされました。
そう、当然のことですが、初めから芸術は芸術になりえません。
世論の関心を引き受けて、肯定と否定の中で磨かれた先に芸術的な付加価値は生み出されていくものです。
エルヴィス・プレスリーが人気だった頃に比べて、60年代は音楽的な実験や革新、様々なジャンルや文化と融合を果たしています。
例えば、ビートルズはインド音楽やクラシック音楽の要素を取り入れたり、ジミ・ヘンドリックスはエレクトリック・ギターの可能性を拡張し、後世の三大ギタリスト達に繋がります。
また、サイケデリック・ロックはLSDなどの幻覚剤の影響を受けて、奇抜な音や視覚効果を生み出しています。
そして、ここで大切なのが社会的なメッセージや意識を強く表現、訴求したことです。
例えば、ボブ・ディランはベトナム戦争や公民権運動などの社会問題について歌ったり、ジョン・レノンは平和や愛を訴えたりしました。
メッセージの力が大きくなればなるほど、音楽に物語という背景が追加されていきます。
それが、ビートルズの生み出したコンセプトアルバム(アルバム名:サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド)という概念です。
物語という背景が生まれれば、次は余白です。
そこでアーティストとファンの間(余白)を埋めるものとして、ツアーが重要視されます。
こうした流れの中で、現在の収益構造の仕組みが確立されていったと。
そのムーブメントは2000年代にアヴリルラヴィーンがキャンディロックを開発するなど、今も脈々と流れ続けています。
つまり、それは、宇宙創生のビッグバンのようなもので、ロックというジャンルが60年間続いているということです。
だとするならば、人気者を呼んで見込める収益も大切ですが、プリンスが生み出したブラックミュージックジャンルのように、新たなジャンルを開発することで中長期的なトレンドを保持すること。
その可能性は今の時代、インフルエンサーの登場によって現実的になってきたのかもしれません。
ということで、今回はイベント主催者の立場から、音楽ライブについて一緒に考えていきましょう。
ライブは大物アーティストを招聘するべきか、それとも潜在的なアーティストを発掘するべきか。
あなたならどうしますか?
■「儲からないライブはやるべきではない。」
意見1: アーティストの来日公演は大きな経済効果を生み出すため、経費の高騰も許容されるべきである。
意見2: 大物アーティストの公演はチケット収入やグッズ販売で高い収益を上げることが可能。
意見3: 来日公演の成功はプロモーターや関連産業にとっても重要な収益源となる。
■「文化戦略の1つとしてライブは見るべき。」
意見1: 文化的多様性を保つためには、経済的な理由だけでなく、様々なジャンルのアーティストの来日が必要。
意見2: 小規模なアーティストやマイナーなジャンルのアーティストも積極的に招聘し、ファンの選択肢を広げるべき。
意見3: 政府や地方自治体が文化交流の一環として、アーティストの来日支援を行うことで、文化的多様性を促進できる。
■経済的利益の追求
- 目的: 最大限の経済効果を追求し、業界の収益性を高める。
- 建前: 大物アーティストの公演は、ファンにとっての大きな魅力であり、市場の需要に応えるものである。
- 本音: 高いチケット価格やグッズ販売からの収益を最大化したい。
- 信条: 「市場の需要と供給の法則に従い、最大の利益を追求する。」
■文化的多様性の維持
- 目的: 洋楽市場の文化的多様性を保ち、幅広いジャンルのアーティストに来日の機会を提供する。
- 建前: すべての音楽ファンにとって価値のある多様な音楽体験を提供することが重要である。
- 本音: 経済的利益だけでなく、文化的価値も重視したい。
- 信条: 「文化的多様性は社会全体の豊かさに寄与する。」
では、ここで一緒に考えて頂きたいことがあります。
「円安が進む中で、文化的多様性を保ちつつ、国際的なアーティストの来日公演をどのように実現させることができるのか?」
あなたはどう思いますか?
■乖離を埋めるためのきっかけ
■未来を担うべき主体
政府: 政策や資金提供を通じて、文化的多様性と経済的利益のバランスを支援できる。
音楽業界団体: 業界の持続可能性を目指し、アーティスト支援や市場の多様化に貢献できる。
ファンコミュニティ: 需要の声を高め、多様なアーティストの支援を促すことができる。
アーティスト: 文化的多様性の担い手として、自らの音楽を通じて文化交流を促進できる。
テクノロジー企業: 新しい配信技術やプラットフォームを提供し、アーティストとファンをつなぐ新たな方法を開発できる。
あなたなら、どんな理想の状態を想像しますか?
■理想と現実の間
経済的支援の強化
- 理想: 政府や業界団体からの経済的支援により、多様なアーティストの来日が可能になる。
- 現実: 限られた資源と支援の中で、どのアーティストを支援するかの選択が必要。
- 対処法: 支援の基準を明確にし、文化的多様性を考慮した選択を行う。
情報技術の活用
- 理想: オンラインコンサートなど、新しい技術を活用して物理的な距離の制約を克服する。
- 現実: オンラインイベントは生の公演とは異なる体験であり、ファンの反応が分かれる。
- 対処法: オンラインとオフラインのハイブリッド形式のイベントを開発し、より多くのファンにアクセスする。
文化交流プログラムの促進
- 理想: 国際的な文化交流プログラムを通じて、アーティストの来日を促進し、文化的多様性を支援する。
- 現実: 文化交流プログラムの設立と運営には時間と資金が必要。
- 対処法: 国際協力とパートナーシップを深め、共同でプログラムを開発する。
そしてあなたは、どうやって理想と現実の間を克服していきますか?
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