「良いものが理解されない世の中になった。日本にはおよそ1300種類の伝統工芸品とされるものが存在するが、その多くが需要の減少や後継者不足により危機に瀕している。」
黄綬褒章を受賞された方とお話した際に頂いた言葉です。
伝統工芸品の未来について考えさせられました。
「伝統工芸品は日本の文化や歴史を象徴している。」
伝統工芸品の保護・継承を重視すべきという意見があります。
なぜならそれは、その地域や国の文化や歴史を反映しているからです。
そのため、特定の技術や素材、意匠はそれ自体が先人の残してきた遺産だということです。
つまり、次世代にその技術や知識を伝えることは、まるで私たちが子孫を残すように。
それは、日本人らしさを繋いでいく継承行為だと考えることが出来ます。
「伝統工芸品は時代遅れで需要が無いならば延命処置を施す必要はない。」
その一方で、時代の変化や消費者のニーズに応じて、必要なものだけが残るべきだという意見があります。
なぜなら、市場原理に基づく自然淘汰を無視した延命は他に歪みを生み出すものと考えるからです。
例えば、伝統工芸品を継承することで私たちにどのような影響があるのか実感が湧かないという声もあります。
そこには、効果の感じられないものを本気で応援しようと思える人は奇特な人だという印象が存在しています。
あなたは、伝統工芸品産業の現状をご存知でしょうか。
平成28年度の従事者数は62,690人でした。
それは、昭和54年の288,000人と比べて大幅に減少しています。
また、同年度の生産額は960億円でした。
これも昭和58年の5,400億円と比べて大きく低下していることが分かります。
では、そもそもなぜ伝統工芸品産業の衰退が進んでいるのでしょうか。
その理由は主に2つあるとされています。
1つは、高度経済成長期における大量生産・大量消費の経済構造の確立です。
もう一つは、生活様式の洋風化・都市化が進行したことです。
「地域振興や地域経済の活性化を促すことが必要だ!」
伝統工芸品や地域の特色を活かした観光客の誘致策や地域の特色を生かした商品開発があります。
また、地域の若者に伝統工芸品の技術や知識を伝える教育プログラムが実施されています。
しかし、現実は難しい。
伝統工芸が廃れていくことを危惧する声はあっても自分が担い手になろうとする人間は少ないものです。
つまり、大量生産大量消費に紐づく資本主義は生活様式の変容を促した。
一言で言えば、それは、人の心を変えてしまったのだということです。
「効果の見込めないものには投資をしない。」
伝統工芸品の存続問題は、文化や歴史の価値をどのように評価するかという問題でもあります。
すなわちそれは、伝統とは何かという問いに答えていくことでもあります。
あなたは、伝統文化をどうやって評価しますか?
伝統工芸品を残すべき理由について、説明する言葉を持っていますか?
もしも需要と供給の自然淘汰が正しいと考える人が多数派を占めるならば。
もしかしたら地縁と血縁を大切にするという集団の規範は幻想だったのではないかと。
つまり、規範に従っていた理由は、サンクコストを回収するためだったのではないかと。
そんなことを考えさせられました。
「人類が、人間が、日本人が、日本が、自治体が、先代が積み上げてきた埋没費用は到底換算出来るものではない。」
だから、無下には出来ないので従っていた。
もしも仮に、そんな理屈が今の人間たちを覆う思想なのだとしたならば。
私たちはこれで善かったのでしょうか。
あなたはどう思いますか?
※伝統工芸品についてより深く知りたい ※費用対効果 とは ※サンクコストについてより深く知りたい
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