次世代継承学

【第74話】ゲーム業界が自主規制されない世界を作る。

「身長の低い男性は人権が無いという発言は、スノーボードの反省してまーす会見と全く同じ構図だと思うんですよね。界隈の論理が広く普及されないことで業界がダメージを受けるのは勿体ない気もします。」
文化評論を生業とされている方とお話をした際に、成長産業が克服すべき課題について考えさせられました。

「ゲーム業界の成長は経済に大きな利益をもたらし、技術革新の推進力となっている。」
経済成長の推進を優先するべきだという意見があります。
XR(クロスリアリティ)のような新技術は、ゲーム業界の成長をさらに加速させる可能性があると。
世界に誇る日本のゲーム文化は奨励されるべきなのだと。

「ゲームの過度な利用は、依存症や社会的孤立などの問題を引き起こす可能性がある。」
成長産業だからこそ、社会的影響も考慮して慎重に拡大していくべきだという意見があります。
eスポーツのような新しいゲーム分野の登場は、社会的な規制や倫理的な問題を引き起こす可能性があると。
課金ゲームがもたらす悪影響は人間を廃人する可能性があるのだと。

「ゲーム業界は、世界的に急速に拡大している。」
2020年には国内だけで約1.8兆円の売上を記録しました。
その内訳は、ハード(PS5など機器のこと)で約800億円、ソフトで約1兆円でした。
また世界で見れば、モバイルゲームが約9兆664億円、家庭用ゲームは約5兆3,785億円、パソコンゲームで約3兆9,270億円です。

もはやゲームは、エンターテイメントとしてだけでなく、教育や医療、ビジネスなどの分野でも活用されています。
例えば、Nintendo Switchはフィットネスや知的なリハビリ分野でも使われるケースも増えて来ました。
そして、SONYのPS5やPCゲームのプラットフォームであるSteamはゲーム業界の成長をさらに加速させています。

「現実世界と仮想世界を融合させるエンターテインメントは、ゲーム業界から実装されていくだろう。」
新技術の一つに、XR(クロスリアリティ)があります。
XRとは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)など、現実世界と仮想世界を融合させて、新しい体験を作り出す技術の総称です。

「レディプレイヤー1の世界は、人間が知覚拡張機器を装着して、現実の動作がリアルタイムで仮想世界に反映される双体験状態を示している。」
VRは自分の身体を使ってゲームの世界に入り込むことで、またMRは現実と仮想の両方に影響を与えることです。
スティーブン・スピルバーグ『レディプレイヤー1』はまさにこのような世界観を表現した作品でした。

「ポケモンGOは現実のマップにポケモンを出現させて捕獲が出来ると同時に、カメラにポケモンを投影することも出来る。」
ARは、現実の空間に仮想のキャラクターやオブジェクトを重ね合わせることです。
それは、現実空間に仮想の事物を出現させて擬似的な融合を果たす仕組みと言えるでしょう。

「現在見えている映像と過去に撮影していた映像を重ね合わせ、過去に起きたことをいま起こっているかのように錯覚させること。」
SRは、過去の映像を現実に重ね合わせることです。
それはつまり、実際には存在していない虚構を、現実と置き換えて表示することも可能とする技術です。

Meta社『Meta Quest 3』は、まさにXRを体験するためのハードです。
ゲームの没入感や臨場感を高めるだけでなく、ゲームのジャンルや表現方法を多様化させることができます。

XR技術とそれを可能にするハード及びソフトの進化は、ゲームの魅力や可能性を拡大させてくれます。
そして、ゲーム業界の市場規模や競争力を高めると同時に、技術転用により新たな産業や市場に対するアプローチを可能とします。

しかし、ゲーム業界の成長には、社会的、心理的な問題も伴っています。
ゲームの中毒性や暴力性、倫理性などに関する議論もあります。

例えばeスポーツと呼ばれる、ゲームを競技として行う分野でその課題が顕在化しています。

eスポーツは、ゲームのプレイヤーが賞金や名誉をかけて対戦するもので、世界的に人気が高まっています。
ちなみに日本では、2020年には約1,000万人のeスポーツファンが存在し、2023年には約1,500万人に増えると予測されています。
しかし、eスポーツには、賭博罪や風営法、景品表示法などの法規制や、著作権法や個人情報保護法などの契約上の問題があります。

「過度な集中を必要とする業界では、エナジードリンクの販促が正当化されて受け入れられている。」
エナジードリンクは年々健康被害が報告されており、過剰な接種は危険です。
しかし、過度な集中を要するゲーマーに対して、エナドリを飲むことがカッコいいというマーケティングが展開されています。

「グランドセフトオートは過度な依存と反社会的な倫理観を植え付けるゲームで、年齢規制を越えたプレイ規制が必要だ。」
また、ゲームの中には反社会的行為、暴言や暴力などを誘発してしまうものも存在します。
節度があれば特に問題ないのですが、やはり問題は一部の礼節を弁えないプレイヤーが槍玉に上げられてしまうという現実です。

そのため、ゲームの利用者や開発者、運営者に対する規制や指導が必要だという声も挙がっています。

ゲーム業界の成長がもたらす経済的な利益や節度を持って楽しむことで得られるものには確かな幸福感があります。
しかし、それに伴う社会的、心理的な影響をどう克服して行けば良いのでしょうか。

それは、つまり、マイノリティの界隈がマジョリティに受け入れてもらうためにはどうすべきかという問題だということです。

「ゲームの健康的な利用を促進するためのガイドラインの策定するべきだ。もしくは依存症防止のための教育プログラムの開発するべきだ。」
ある立場の人は、社会的影響を最小限に抑える方法を模索するためには、規制を導入することを進言しています。
それは、自主規制を設けることですべてのプレイヤーに節度があることを示すことで世間に受け入れてもらおうというものです。

例えば、インターネットやスマートフォンの普及も同様です。
これらの技術は多くの利便性をもたらしましたが、同時にデジタル依存症やプライバシーの問題など、新たな社会的課題を生み出しました。

かつて、出会い系サイトは売春や非道徳的な関係を生み出す温床になっているという印象がありました。
それが、言葉のマジックで「マッチング」や「パパ活」や「ギャラ飲み」というキャッチーな言葉によって一気に大衆化したという例もあります。

またネット依存についても、明確な規制措置が存在していませんが、デジタルデトックスという言葉が生まれるなど、改善の兆しが見えています。

「キャッチーな印象を与えれば、マジョリティにも受け入れられていく。」
もしそうだとした場合、ただしそこには問題があると感じます。
それは、道徳や倫理観を問う前に普及される危険性があるということです。

ある界隈の文化を正しく認知されて、世間に受け入れられるためにはどうすべきなのか。
逆に、受け入れられる必要はなくて、とことんマイノリティで独自文化を築けば良いという意見もあります。
とても考えさせられる問題だと思いました。


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