次世代継承学

【第110話】低価格帯戦略 vs コア顧客戦略

「しまむらの低価格戦略が功を奏している様子を見ると、庶民の味方という絶対的なポジションを築いた上で都心と地方で絶妙な価格調節をしている素晴らしさが背景にあると思います。」

服飾系の専門学校で講座を持っている方とお話をした際に、アパレルの価格戦略について考えさせられました。

■「大量生産大量消費時代は低価格戦略が最も良い。」
意見1:
大量生産によるコスト削減が期待出来る。
意見2: 広範な消費者層へのアピールが可能。
意見3: 競争環境における優位性が明確なので手が打ちやすい。

■「価格競争力しか魅力が無いブランドに未来はない。」
意見1:
品質とブランド価値の維持はマルチ展開に繋がる。
意見2: 特定ターゲットへの訴求はコアファンの獲得が期待出来る。
意見3: 高い利益率の確保が可能になる。

■低価格戦略の推進

  1. 目的: 広範な市場へのアクセスと大量販売
  2. 建前: すべての消費者に手頃な価格で品質の良い製品を提供
  3. 本音: 市場シェアの拡大と競争優位の確立
  4. 信条: 価格による市場支配と効率的な生産

■中価格帯の維持

  1. 目的: 特定のターゲット市場への訴求と高い利益率の確保
  2. 建前: 品質とブランド価値に基づく製品の提供
  3. 本音: ブランドイメージの維持と高い価格設定による収益性
  4. 信条: 品質とブランド力による市場の差別化

■理想と現実の間

「私たちは人間に取り囲まれているのではなく、モノによって取り巻かれている。」
現代社会はオリジナルを消失してしまい、誰もがコピーになっているのだと。
フランスの哲学者ジャン・ボードリヤールはそう語ります。

では、誰もオリジナルになれず、手に入れることが叶わない時代において、どうやって人は価値を認識しているのでしょうか。

それは、一言で言えば、差異です。
比較して並べた時に、違いが浮き出る。
その違いによって、私たちはアイデンティティを確保するしかないということです。

だから、他社との違いを生み出すための欲求というのものが私たちを突き動かしている。
承認欲求という言葉に一括りにされてしまいがちなこの欲求について、私は輪郭欲求と定義しています。

それは、自分と他人の境界線(バウンダリー)を渇望してしまう現象に焦点を当てたものと考えています。
ちなみにバウンダリーとは、身体の境界、パーソナルスペースの境界、持ち物の境界、責任の境界、思考の境界など、さまざまな種類があります。

するとここで、新たな疑問が生まれてきます。
それは、「私たちは本当に自分が欲しいモノを生産しているのか?」というものです。

私はそうではないと考えます。
差異を求める輪郭欲求がひたすら生産と消費を駆り立てているのではないかと。
それは、つまり、人間がモノを生産管理しているのではなく、モノが人間を行動管理しているのかもしれません。

例えば、あなたが先日購入した衣服。
もしかしたらお求めやすい価格のモノかもしれないし、或いはブランド品のお高いモノかもしれません。
いずれにせよ、袖を通した多幸感はいつまで続くのでしょうか。

毎シーズン、春夏秋冬でモデルが変わっていく新作を見て、私たちはまた差異を求めて突き動かされていく。

この呪われた消費はいつ終わるのでしょうか。
呪いを解くために、アパレル業界はどのように変革していくべきなのか。
ブランド力を上げて、LTVを底上げしていくための施策とは何か。

そこがこの業界の面白いところだなと感じさせられました。

■乖離を埋めるための事例

  1. ユニクロのダイナミックプライシング戦略
    • ユニクロは消費者の行動に合わせて価格を調整し、高い消化率を達成しています。 出典: Retalon
  2. ZARAのファストファッションモデル
    • ZARAは迅速な市場反応と効率的な在庫管理により、中価格帯での競争力を維持しています。 出典: Shopify
  3. H&Mの価格と品質のバランス
    • H&Mは中価格帯で品質と価格のバランスを取り、幅広い消費者層にアピールしています。 出典: QuickBooks
  4. プライマークの低価格戦略
    • プライマークは極めて低い価格設定で市場を席巻し、大量販売による利益を追求しています。 出典: NetSuite
  5. ASOSのオンライン販売戦略
    • ASOSはオンラインプラットフォームを活用し、中価格帯の製品を効率的に販売しています。 出典: Dealavo

■未来を担うべき主体

アパレル業界における低価格戦略と中価格帯戦略の成功には、それぞれ企業の経営陣、マーケティングチーム、サプライチェーンマネージャー、およびブランドマネージャーの力が必要です。

これらの主体が、市場の動向を理解し、適切な戦略を策定して実行するべきだと考えています。

■乖離を埋めるための具体的な手段例

  1. 市場調査と分析: 消費者のニーズと市場の動向を理解する。
  2. ブランドポジショニング: 明確なブランドイメージと価値提案の確立。
  3. 効率的なサプライチェーン管理: コスト削減と在庫管理の最適化。

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