次世代継承学

【第122話】中央集権アプローチ vs 地方分権アプローチ

「地方創生の実現には地方自治体の自立と権限の拡大が必要だが、進展が遅い。また、成功事例があっても、その再現性や持続可能性が問題となる。」

地方の自治会で役員をされている方とお話をした際に、地方創生のアプローチ手法について考えさせられました。

「日本列島を高速道路・新幹線・本州四国連絡橋などの高速交通網で結び、地方の工業化を促進し、過疎と過密の問題と公害の問題を同時に解決する。」
田中角栄『日本列島改造論』のように、かつて中央集権的にインフラを一気に整えようとするアプローチがありました。
その一方で、1990年代以降の日本は地方分権改革を進めて来ました。

街や地域が経済的に発展すれば、地域に住む人々の生活水準が向上します。
すると、徐々に高級な商品やサービスが充実されて、新しい建物やインフラが整備されるようになっていきます。

しかし、そこには人知れず排除されていく人間たちが存在していました。

「誰のための持続可能性なのか、その答えをまだ人間は出せていない。」
イギリスの社会学者ルース・グラスは、地場に根付いた人々を排除して次第に裕福な人たちの街に塗り替える行為をジェントリフィケーションと呼びました。
それは、低所得地域(インナーシティ)を再開発し、高級化・上位化をすることにより地域全体の価値が高まる現象です。

SDGsは持続可能な社会を推進する指標とされています。
とはいえここには問題があります。

それは、誰のための持続可能性なのかという点です。

もちろん、人間のためとか動物のためとか地球のためとか様々な議論が展開出来るでしょう。
しかし、私がここで危惧しているのは、「物質的な持続可能性についての議論に終始している。」ということです。
皮肉交じりに言ってしまえば、人間も動物も地球もすべて物質的な視点から見た持続可能性が問われているのではないかと。

「コスパもタイパもすべては加速主義に集約されていくことに関して、人類はあまりにも無自覚なのではないか?」
物質的な視点は加速主義に繋がり、加速主義を追求した先には、人間 VS AI の構図が待っています。
だから未来予想は概ねディストピアに落ち着いていき、陰謀論や都市伝説と言ったものに変換されていく。
そしてほとんどの結論は人口削減や管理社会に終着する。

つまり、ここで私が求めているのは加速する未来(アクセルを踏むこと)ではなく、減速する未来(ブレーキを踏むこと)だということです。
それは言い換えれば、いずれ精神を緩やかに減速させなければならない時期が必要になるとうことです。

なぜなら、数字と戦おうとする人間が多数派となり、その多くがディストピアに巻き込まれて閉塞感に押し潰されていくからです。

世界はこれからAI/人工知能の急速なコモディティ化を迎えようとしています。
それは、加速主義をさらに浸透させていくことでしょう。

「物質的な充足が精神的な充足も満たすわけではない。」
当たり前だったこの事実に対して、私たちはいつか再度気付かなければいけない時期が来るでしょう。
しかしそれはまだ先の話かもしれません。

そんな状況の中で政治は人民のために舵取りをしなければなりません。
最大多数の最大幸福を善とするのか、それとも別の指標を持ち出すのか。

いずれにせよ、地方地域の創生は今後の日本にとって避けることの出来ない、蓋をすることが出来ない問題です。

「中央集権の方が大規模な展開が期待できる。」

  1. 意見1: 国が主導して方針を決めて資金を配分することで、効率的にプロジェクトを進めることができる。
  2. 意見2: 統一された基準や目標設定により、全国的な視点から地方創生を推進できる。
  3. 意見3: 大規模な投資やインフラ整備が必要な場合、中央集権的アプローチが有効である。

■「地方分権の方が特色を活かした展開が期待できる。」

  1. 意見1: 地方自治体や地域住民が主体となることで、地域の実情に合ったプロジェクトを実現できる。
  2. 意見2: 地方自治体の自立と権限の拡大により、柔軟で多様な地方創生が可能になる。
  3. 意見3: 地域住民の参加と協働により、持続可能な地方創生を実現できる。

■中央集権的アプローチ

  • 目的: 国全体のバランスある発展と経済成長を促進する。
  • 建前: 地方創生を通じて、全国どこでも生活の質を向上させることができる。
  • 本音: 地方創生の取り組みを通じて、中央政府の影響力を維持または拡大したい。
  • 信条: 効率的な資源配分と統一された政策実施による国家の強化。

地方分権的アプローチ

  • 目的: 地域の特性を活かした自立と持続可能な発展を実現する。
  • 建前: 地方自治体と地域住民が主体となり、地方創生を推進する。
  • 本音: 地方自治体や地域住民が直面する実際の問題やニーズに基づいた対策を求めている。
  • 信条: 地域の多様性と地域住民の参加に基づく地方創生の実現。

■理想と現実の間

人口減少と高齢化: 理想では、地方創生によって若者を含む新たな居住者を惹きつけ、人口減少と高齢化を食い止めることができます。しかし現実では、多くの地域で人口減少と高齢化が進行し続けています。

資金とリソースの不足: 理想的には、地方創生プロジェクトには十分な資金とリソースが供給されるべきですが、現実には、限られた予算内で成果を出す必要があります。

地域間格差の拡大: 地方創生の理想は、全ての地域が均等に発展することですが、現実には、成功事例となる地域と取り残される地域との間で格差が拡大しています。

持続可能性の確保: 理想では、地方創生は持続可能な発展を目指しますが、現実には短期間での成果を求める圧力が存在し、長期的な視点が欠けがちです。

地域住民の参加と協働: 地方創生の理想は、地域住民が積極的に参加し、プロジェクトを共に推進することですが、現実には参加を促すための仕組み作りが不十分な場合があります。

■乖離を埋めるための事例

  1. 地域資源をそのまま生かす
    • 事例: 地域特有の自然資源や文化を活用した観光プロジェクト。例えば、地元の伝統工芸品を用いた体験型観光や、地域の食材を生かしたグルメツアーなどが挙げられます。
    • 出典: PR TIMES Magazine
  2. 人材マッチングを活用した地方創生
    • 事例: 地方自治体と企業、教育機関が連携し、地域に必要な人材を確保するためのマッチングプラットフォームの開発。地方での就労を希望する若者や、Uターン・Iターン希望者を地域の企業と結びつける。
    • 出典: PR TIMES Magazine
  3. 地元酒造メーカーと自治体の協力
    • 事例: 宮崎県都城市での地元酒造メーカーと自治体の協力による地方創生プロジェクト。地元の特産品を活用した新商品の開発や、地域イベントの共同開催などが行われています。
    • 出典: オリックス株式会社
  4. 「天空の楽園 ナイトツアー」
    • 事例: 長野県阿智村で実施されている「天空の楽園 ナイトツアー」。このツアーは、阿智村の美しい星空を活用した観光プロジェクトで、国内外から多くの観光客を惹きつけています。
    • 出典: オリックス株式会社
  5. 地方創生のための公民連携
    • 事例: 地方創生における公民連携の取り組み。地域の課題解決やプロジェクトの推進にあたり、地方自治体、民間企業、NPO、地域住民が協力し合うことで、地域全体の活性化を図る。
    • 出典: 東洋大学

■未来を担うべき主体

  • 地方自治体: 地方創生の主体として、プロジェクトの計画、実施、評価を行います。
  • 民間企業: 地方創生における投資、技術提供、雇用創出などで重要な役割を果たします。
  • 地域住民: 地方創生プロジェクトに参加し、地域の発展に貢献します。
  • 国家機関: 地方創生に関する政策の策定、資金提供、情報提供などを行います。

地方創生は、これらの主体が協力し合い、共に取り組むことで、理想と現実の乖離を埋め、持続可能な地域社会の実現を目指すことができるでしょう。

■乖離を埋めるための具体的な手段

  1. 若者と新たな居住者の誘致策: 地方創生においては、若者や新たな居住者を惹きつけるための具体的な施策が必要です。例えば、住宅支援、就業機会の提供、教育や育児支援などが挙げられます。
  2. 民間企業との連携強化: 地方創生プロジェクトにおいては、民間企業との連携を強化し、資金やリソースの確保を目指すべきです。パートナーシップを通じて、新たなビジネスモデルの創出や雇用創出を促進します。
  3. 地域特性を生かしたプロジェクトの推進: 各地域の特性を生かした地方創生プロジェクトの推進が重要です。地域独自の文化や資源を活用し、外部からの訪問者を惹きつけることができます。
  4. 地域住民の参加促進: 地域住民がプロジェクトに積極的に参加し、意見を反映できる仕組みを整備することが重要です。住民参加型のプランニングや意思決定プロセスを確立します。
  5. 持続可能な発展のための教育と啓発: 地方創生の持続可能性を確保するためには、地域住民や関係者に対する教育と啓発が不可欠です。環境保護、経済的自立、社会的包摂などに関する知識の普及が求められます。

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