次世代継承学

【第130話】インバウンド価格戦略 vs ローカル価格戦略

「外国人観光客をターゲットにした店は、高額な価格設定となり地域住民にとっては手が出しにくい。顧客層が違うので地場に根ざした店とはどう合っても相容れない。」

老舗の飲食店を経営している方とお話をした際に、価格戦略について考えさせられました。

「ジェントリフィケーションは知らず知らずのうちに始まっていく。」
観光客が入る店はあるけど、地域住民が入れる店はない。
観光立国と呼ばれる国のほとんどが、観光客と地域住民に所得格差があります。

BURBERRYで働いている店員がBURBERRYを買えない。
ブルガリ・ホテル・ローマで働くホテルマンがブルガリ・ホテル・ローマに泊まれない。

つまり、ブランド価値や文化的な価値が高められたラグジュアリーな財は、地域にありながら地域住民のためのものではないということです。

例えば、5年遅れで開業された豊洲の商業施設「豊洲 千客万来」。
海鮮丼1杯が約7000円、コロッケが800円と高価格設定が話題を呼んでいます。

もちろん、地域経済という側面では観光客特需の恩恵があります。
とはいえ、店内であらゆるおもてなしが完結出来るような複合型体験がトレンドになりつつある今、ラグジュアリー層がローカル層の商品を大量に購買してくれるかは疑問です。

「出自の違うシステム同士が相容れることは無いからな。どちらかがどちらかを屈服させようとするだけだ。」
機動戦士ガンダムUCのセリフを借りれば、インバウンド価格戦略とローカル価格戦略が相容れることはありません。

とはいえ、「豊洲 千客万来」の開業時点でのテナント数が当初予定の半数以下に留まり、施設の将来性も懸念されているところを見ると、地場に根ざすことの重要性を考えさせられます。
また実店舗ビジネスである限り、大半の労働者はその周辺地域の方々なので複雑な想いを抱えて働くことになるでしょう。

中長期的な繁栄を考えた時、地域に愛されながらも高収益体質になるためにはどうするべきなのでしょうか。

「高尚な文化を強く訴求するためには必要な戦略だ。」

  • 意見1: 外国人観光客は円安の恩恵で高価な商品にも手を出しやすい。
  • 意見2: インバウンド需要の増加は、長期的に見て収益性の向上に寄与する。
  • 意見3: 外国人向けの特色ある商品やサービスは、国際的な魅力の創出につながる。

「地域に愛されてこそのビジネスだと思う。」

  • 意見1: 地元住民の日常的な利用が、持続可能なビジネスモデルの基盤を形成する。
  • 意見2: 地元市場への貢献は、地域社会との良好な関係構築に役立つ。
  • 意見3: 地元住民向けの価格設定とサービスは、社会的な批判を避けるためにも重要。

インバウンド価格戦略

  • 目的: 外国人観光客からの収益を最大化し、地域経済に貢献する。
  • 建前: インバウンド観光客に特別な体験を提供し、日本の魅力を国際的に発信する。
  • 本音: 高収益を追求し、短期間での投資回収を目指す。
  • 信条: 購買力の高いインバウンド市場を活用して、地域の観光資源を最大限に利用する。

ローカル価格戦略

  • 目的: 地元住民や国内消費者をサポートし、長期的な顧客関係を築く。
  • 建前: 全ての人がアクセスできる公平な価格設定を通じて、社会的責任を果たす。
  • 本音: 安定した顧客基盤を維持し、競争の激しい市場で生き残る。
  • 信条: 地域社会への貢献と持続可能な経済活動が企業の基本的な価値である。

■乖離を埋めるためのきっかけ

■未来を担うべき主体

  • 政府: インバウンド市場の持続可能な成長と規制のための政策策定と実施の責任を担う。
  • 事業者: 観光サービスの提供者として、環境と文化に配慮した事業運営の責任を持つ。
  • 地域コミュニティ: 地域の文化と環境を守り、持続可能な観光の推進者としての役割を果たす。
  • 観光客: 観光行動において、地域の文化や環境に配慮し、責任ある行動を取ることが期待される。

■理想と現実の間

観光客数の増加

  • 理想: インバウンド施策により、観光客数が持続的に増加し、地域経済に貢献する。
  • 現実: 実際には、外部要因(例:パンデミック、政治的緊張)により観光客数が大幅に減少することがある。
  • 対処法: 多様な観光市場の開拓と、危機管理計画の策定。

地域経済への貢献

  • 理想: インバウンド観光が地域の小規模事業者や伝統産業に直接的な収益増につながる。
  • 現実: 観光収入が特定の大手事業者に集中し、地域経済全体への波及効果が限定的であることがある。
  • 対処法: 地元事業者への支援策の強化と、地域資源の活用促進。

文化的影響

  • 理想: 文化交流が促進され、相互理解と地域文化の価値の向上が期待される。
  • 現実: 過度な観光化により、地域の文化や伝統が歪められることがある。
  • 対処法: 持続可能な観光開発と、文化保護のためのガイドラインの整備。

環境への影響

  • 理想: エコツーリズムの推進により、環境保護と観光の両立が達成される。
  • 現実: 観光地の自然環境や生態系への負荷増大が問題となることがある。
  • 対処法: 環境影響評価と、持続可能な観光政策の推進。

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