次世代継承学

【第144話】最適解とされるような情報はどうすれば見つかるのか?

「陰謀論を研究した結果、証拠は循環されて反証が困難な閉鎖的な情報構造が形成されているそうです。それはある意味、どのような批判に対しても言い返す論拠を作れるということであり、なかなか論破が難しいものと言えそうです。」

メディア論を専攻されている方とお話をした際に、情報の真実性について考えさせられました。

「ヌーシャテル大学の研究者たちは、約2万4000件の陰謀論関連記事と7万3000件の非陰謀論記事を分析し、陰謀論がどのように情報を構築し、拡散しているかを明らかにした。」
この研究では、陰謀論が他の陰謀論を根拠にして「証拠の循環」を行い、複数の異なるトピックを組み合わせて巨大な陰謀論の世界観を構築していることが判明しました。
これにより、陰謀論が持つ特性と社会に与える影響について新たな洞察が得られました。

つまり、証拠の循環が独特の世界観を形成して強固なものとしていくということです。

「9.11テロ事件は、陰謀論の典型的な対象となっている。」
例えば、テロ事件はアルカイダではなく、アメリカ政府やイスラエル政府などの内部の勢力が計画し、実行したという陰謀論があります。

素朴な疑問ですが、このような陰謀論はなぜ多くの人々に受け入れられるのでしょうか。

一つの可能性としては、テロ事件の規模や影響があまりにも大きすぎるために、それに見合うような大きな意味や理由を求める傾向があるということが考えられるでしょう。
つまり、テロ事件は、単なる偶然や過激派の狂気ではなく、何らかの目的や計画に基づいて行われたと信じたいという心理が働くということです。

「科学の進歩は、或る理論にたいする肯定的な事例が蓄積してこれを反証不可能たらしめてゆくところで起こるのではなく、否定的な事例が反証した或る理論を別の新しい理論がとって代えるところで起こる。」
まさにそれは、イギリスの哲学者カール・ポパーが指摘したように、有神論的な世界観の名残であるとも解釈できます。
すなわち、世界は偶然や無秩序ではなく、何者かの意志や計画によって支配されているという考え方です。

しかし、この信念は、科学的な検証に耐えないだけでなく、社会的な信頼や協力を損なうこともあります。

なぜなら、陰謀論は、政府やメディア、科学者などの権威や専門家に対する不信感や疑念を生み、社会の多様性や寛容性を損ない、社会の対話や議論を阻害するからです。
したがって、陰謀論に惑わされないためには、メディアリテラシーや批判的思考の教育や啓発が必要であると言えるでしょう。

しかしながらここで忘れてはいけないことがあります。
それは、立場によって人間の視点は変わるということです。
一説によれば、高学歴な人間ほど凝り固まった思考が原因で新興宗教や陰謀論に取り込まれていくという話もあります。

陰謀論を否定して善良な人間だと思っている人間であっても、世界をそれぞれの視点から見ていることには変わらず、その意味ではすべての人が局所的な陰謀論者になる可能性を秘めています。
例えば分かりやすい場面で言えば、信頼関係を疑うという行為は局所的な邪推を生み出すものと言えるでしょう。

つまり、恋バナから社内の噂話まで、すべては局所的な邪推(陰謀論)に通ずるということです。

そうなってくるとモノの見方に正解というのは無く、あるとするならば、アメリカの哲学者トマス・ペインが訴えたようなコモンセンス(常識)だけなのではないかという考え方があります。

「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない。」
とはいえ、ドイツの理論物理学者アルベルト・アインシュタインによれば、常識は大衆の偏見に過ぎないと。
もしそうだとするならば、陰謀論を常識的なモノの見方で否定するという行為については一考する必要が出てきます。

皮肉なことに、証拠の循環は私たちの素朴な日常にも存在しています。
どうやってこの情報社会を生きるべきなのかが分からなくなっている状態。
現代社会がかなり危険な状態に陥っていることが見えてきたのではないでしょうか。

ということで、今回は情報の取り扱い方について一緒に考えて行ければと思います。

「立場によって見方は変わる。」

意見1: 表現の自由は、異なる視点や意見を社会に提供する基本的な権利である。
意見2: 陰謀論も情報の多様性を保証する一環として認められるべきである。
意見3: 陰謀論を排除する基準を設けることは、検閲につながる危険性がある。

「コモンセンスを揺るがしてはいけない。」

意見1: 情報の拡散には社会的責任が伴い、真実に基づく情報提供が求められる。
意見2: 陰謀論の無制限の拡散は、社会的不安や分断を助長する。
意見3: 真実の追求と理解を妨げる情報は、批判的に検証し、適切に管理する必要がある。

■情報拡散の自由は保証されるべき

  • 目的: 情報の自由な流通と個人の表現の自由を保障する。
  • 建前: すべての意見は平等に扱われるべきで、異なる視点が議論を豊かにする。
  • 本音: 主流から逸脱した意見や疑問も公平に扱われる機会を求める。
  • 信条: 表現の自由は民主主義の根幹である。

社会的責任と常識を優先すべき

  • 目的: 社会全体の利益のために、真実に基づいた情報の提供と誤情報の排除。
  • 建前: 真実と透明性は社会の信頼と安定の基盤である。
  • 本音: 誤情報による混乱や不安を防ぎ、社会的責任を果たすこと。
  • 信条: 真実の追求は、公共の利益に寄与する。

■乖離を埋めるためのきっかけ

■未来を担うべき主体

教育機関: 情報リテラシー教育の実施と批判的思考能力の育成。

メディア: 真実に基づいた情報提供と公正な報道の実践。

政府・規制機関: 情報の検証と誤情報対策の法的枠組みの提供。

市民社会: 社会的対話の促進と公共の利益の追求。

技術企業: 情報の拡散メカニズムの管理と誤情報対策の技術的支援。

■理想と現実の間

情報リテラシーの向上

  • 理想: 個人が情報を批判的に評価し、真実を見極める能力を持つ。
  • 現実: 情報過多の時代において、情報リテラシーの不均一。
  • 対処法: 教育プログラムを通じて、全世代にわたる情報リテラシーの向上を図る。

公正な情報の検証機関の設立

  • 理想: 独立した機関が情報を検証し、公正な情報提供を支援する。
  • 現実: 検証機関の独立性や公平性への疑問。
  • 対処法: 透明性の高い運営と多様なステークホルダーの参加を確保する。

社会的対話の促進

  • 理想: 異なる意見を持つ人々が対話を通じて理解を深める。
  • 現実: 社会的分断が対話の障壁となることがある。
  • 対処法: 中立的なプラットフォームの提供と対話の機会の創出。

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