次世代継承学

【第26話】人間は体験と追体験を同時に知覚する。

「矛盾した秩序、強者による搾取、腐敗した構造。だが俺を最もがっかりさせたのは人々の無責任さだった。自分では何も生み出す事無く何も理解していないのに、自分にとって都合の良い情報を見つけると逸早くそれを取り込み踊らされてしまう集団。ネットと言うインフラを食いつぶす動機無き行為が、どんな無責任な結果をもたらそうとも何の責任も感じない者達。俺の革命とはそういった人間への復讐でもある。」
神山健治『攻殻機動隊』には、自由と責任について考えさせられるセリフがあります。

「ネット上のコメントは個人の意見であり、それをどう受け取るかは受け手の自由。情報の真偽を確認するのは受け手の責任。」
ネット上の行動は個人の自由だという意見があります。
生じる影響や結果については、受け手側がどのように受け取るか次第だと。

つまり、情報の真偽やその背後にある意図を判断するのは、情報を受け取る側の責任にあるということです。

「ネット上の誹謗中傷や偽情報の拡散は許されない。それによって人の命が失われることもある。ネット上の行動には責任を持つべきだ。」
一方で、ネット上の行動は現実世界と同じく、社会的な影響を及ぼす可能性があるという意見があります。
特に誤った情報の拡散や誹謗中傷のような行動は、個人や集団に対して深刻なダメージを与える可能性があると。

だからこそ、ネット上での行動には責任を持つべきだという主張です。

「日本のインターネット利用者数は1億人を超え、そのうちの約80%がSNSを利用している。」
このような背景のもと、多くの人々が自らの意見や感想をオンライン上で公開するようになりました。
しかし、その中には根拠のない情報や誹謗中傷を含むコメントも散見されるようになりました。

インターネットの利用における無責任な行動は、個人の自由として許容されるべきなのでしょうか。
それとも、社会全体のために制限されるべきなのか。

あなたはどう考えますか?

ネット上の情報は個人の意見であるとの立場は、情報の真偽を確認する手間を受け手に押し付ける形となります。
また、情報の発信者がその情報の真偽に責任を持たないために、偽情報や誤解を招く情報が拡散しやすくなります。

ここまで聞けば、当然規制と刑罰を強化すべきという考えが肯定されていくでしょう。
しかし、どの情報が誹謗中傷や偽情報であるかの基準が曖昧であるため、過度な罰則が行われるリスクがあります。

仮に、誹謗中傷が確認された場合に罰金刑が敷かれた場合。
同じ言葉でもタイミングと受け取る相手でリアクションは全く異なります。
場所と時期にどれだけ注意を払っても、コピペとキリトリによってすべてが誹謗中傷の温床になり得ます。

つまり、すべての発言が悪意によってどうにでも可変されてしまうということです。

その中で進んで発言したいと思えるのは人間がどれだけいるのでしょうか。
すべてのアカウントと発言にブロックチェーン技術を適用することで嘘や誤魔化しが効かないSNSを誰が使うのでしょうか。

「無責任な行動を防ぐためには、制限だけでなく、利用者自身が情報の真偽を判断する能力が必要である。」
では情報の真偽を判断する能力があれば本当に、解決されるのでしょうか。
次いで言えば、真偽を審議する仕組みさえも堂々巡りに組み込まれる可能性があります。

「直接刃物を持って殺さないからさ。手に血がつかない人殺しでは痛みがわからんのだ。」
そして話は扱う人の素性、そこに帰着していきます。

「想介在経験からは、相手の追体験が得られない。」
私は、関係性の中で肉体的な影響を授受しない経験値のことを想介在経験と呼んでいます。
反対に、関係性の中で肉体的な影響を授受する経験値のことを実介在経験と呼んでいます。

私たちは、体験だけをしているわけじゃありません。
私たちは、体験と追体験を同時に知覚しています。

それを忘れた時から、配慮や遠慮が失われていくのだと考えています。
つまり、私は、規制と刑罰を強化したところで自由と責任が改善されるとは思えませんでした。

あなたは、どう想いますか?


※攻殻機動隊 2nd GIG とは ※誹謗中傷についてより深く知りたい ※機動戦士ガンダムZ とは

未来を予測する”きっかけ”を生み出すメルマガ

似たような情報や視点に囲まれてしまう現代社会。
この先もネットの情報はますますあなたに
最適化されていきます。

でもそれで本当に良かったのだろうか?

成功事例の横展開が業界にイノベーションをもたらすように、
身近でない情報が実は突破の糸口になったりする。

共通点を繋ぎ、線と面で捉え直すこと。

それが我々の贈る言葉の特色であり、
情報から光を引き出す編纂技術だと考えています。

考えるきっかけとなるイベント情報や新着記事を
メールでお届けいたします

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA