次世代継承学

【第91話】日本の文化は収益分配策でより強くなれる。

「YouTube上でのゲーム実況動画の増加とその収益化に関してですが、ゲーム開発企業と実況者間での収益分配をするべきだと思いますか?」
Youtubeでゲーム実況をされている方とお話をした際に、収益分配について考えさせられる言葉を頂きました。

「ゲームの実況動画による収益化は、開発者の労力を無視した行為であり、適切な収益分配が必要だ。」
ゲーム実況動画による収益は、そのゲームの著作権を持つ開発企業にも一部分配されるべきだという意見があります。
実況動画によりゲームのストーリーや内容が明らかになり、購入意欲の減少を招く恐れがあると。

そして、ゲームのプレイ画面やアルゴリズムは開発企業の知的財産であり、無断での利用は著作権侵害に当たるのだと。

「実況動画はゲームの魅力を広め、新たなファンを生み出す重要な役割を果たしている。」
実況動画はファンによる愛情表現であり、ゲームの宣伝効果もあるため、収益を開発企業と分ける必要はないという意見があります。
実況動画は独自の解釈や創造性を加えたエンターテイメントであり、その収益は実況者に帰属すべきだと。

そして、実況動画は独自の創造性を持ち、ゲームプレイそのものではなく、実況者の個性や解説が主要なコンテンツなのだと。

「現在のガイドラインは、非営利であることを推奨しており、投げ銭やスパチャなどの機能を使用した収益化は原則として認められていない。」
任天堂は、2018年に「Nintendo Creators Program」を終了し、ゲーム実況動画に対する新たなガイドラインを発表しました。
このガイドラインでは、任天堂のゲームタイトルを使った動画の投稿や配信は、個人的で非営利的なものに限り、許可されるとされています。
また、カプコンも同様に自社のゲームタイトルを使った動画の投稿や配信について、ガイドラインを設けています。

「Youtube登録者数10万人で月間およそ40万人前後にリーチが出来る。販促手段としてこれほど強力な手段はない。」
大きな販促の裏側に必ずいると言われている仕掛け人は、次いで語ります。
作れば売れる時代は終わったと。

「心が動けば顧客は付いてくる。感情は接する時間に比例する。」
市場でどれだけのシェアを取れるかどうか、それにはいくら必要なのか。
お客様の感情を揺り動かすために、どんな販促手段が適切なのだろうか。

各企業、事業部の中では様々な思惑が交錯しています。

「実況動画がゲームの普及に貢献し、結果的に開発企業の利益にもつながる。」
私はこれに賛成です。
登録者数よりも、配信者の倫理観に左右されるものではありますが、タッグを組むことで大きな効果が出せると考えています。

「ゲームの著作権を持つ開発企業にも一部分配されるべき。」
しかし一方で、その言い分も理解できます。
中間所得層が減る中で、以前のように爆発的なヒットが見込めない業界において、数売れないからこそ内容は秘匿したいと。

言ってしまえば、タッグの組み方次第なのかなと。
例えば・・・

■タイトル毎に、配信者を登録制にすること。
→狙いは、双方にとって新たな収益軸を創出すること。

企業の目線
・登録した配信者を月額課金或いは成果報酬とすることで、コストを抑えた販促手段となり、二次収益軸となる可能性がある
・権利侵害の範囲が明確になる

配信者の目線
・登録した配信者はオフィシャルパートナーとなり、それがブランドになる
・競合排除が効くため、自分のペースで配信環境を整える事ができて、収益軸が守られる

↓その影響作用とは・・・

消費者の目線
・誰の何を見るべきかが明確になり、得られる情報の鮮度と品質が洗練される
・熱量の高い配信者が視聴出来るので、ファンとしてゲーム愛の響く場所が手に入る

波及効果
・マナー違反者の報告精度が上がり、プラットフォーム側のコストが削減される
・TASの見栄えだけではなく、ゲーム開発陣やプロゲーマーから見た攻略作法や推しポイントがクローズアップされる

介在者の目線
・攻略本業界やノウハウ研究者が、新たな価値を創出出来る可能性がある
・IPOを取り巻く関係性から二次収益の仕組み化が展開出来るため、その派生で業務支援や委託事業にも恩恵が生まれる

【第91話】日本の文化は収益分配策でより強くなれる。

この提起は、1つのコンテンツを通して、どんな価値を生み出すべきかを考えるきっかけになるのかなと思います。
ゲーム実況配信者とIPO保有側で、広報宣伝に影響される誰の何をどうしていくべきかを考えるきっかけになるのかなと。

世界最大級の同人誌即売会、それがコミックマーケットです。
3日間の会期で、アマチュアの方を中心に自身で描いた本(同人誌)やグッズなどを売り買いする場です。

今ではその規模の経済に相乗りする形で、企業ブースというアニメ会社等の企業がコミケ限定のグッズや催しを行うスペースもあります。
その運営は、1975年12月21日に漫画批評集団「迷宮’75」によって開始されて、今でも非営利団体のコミックマーケット準備会がボランティアで実施運営しています。

「ファンが自由に創作活動出来る場が欲しい。」
20世紀後半から21世紀初頭にかけて、日本で二次創作文化と呼ばれる現象が起きました。

二次創作文化は、同人誌やコスプレなどの様々な形で表現されます。
例えば、ハロウィンやフェスに行くと見掛けるコスプレイヤー達は度々ニュース記事でも話題に挙がります。

当然、ゲーム配信者とゲーム開発企業で起きた対立軸のように、二次創作文化は、既存の作品の著作権を侵害する可能性があります。
そのため、二次創作文化に対して、著作権者の許可や報酬の分配を求める声もあります。

「二次創作文化がファンによる愛情表現であり、作品の宣伝効果やファン熱の増加に繋がる。」
しかし、二次創作文化に対して、著作権者は寛容な姿勢をとることが多いです。
だからこそ、オタクやマニアという言葉が一般に浸透されたのかなと。

つまり、それは、日本のカルチャーとは長い年月を掛けてファンダムコミュニティーを生成して来たことを意味します。
それが日本のアニメ・ゲーム・漫画を強力なソフトパワーに押し上げて来ました。

「当たり前のように、ファンの称賛と不満が飛び交い、それに左右されるクリエイターがいる。」
SNSが発展する前までは、IPOを保有する側に価値があると言われて来ました。
しかし、ファンの発信力が経済市場を生み出すまでに発展した現在。

もはや私は、クリエイターとファンの間に優劣の差があるとは思えなくなって来ました。

ファンダムコミュニティーがどれだけのバイラルマーケティング市場を生み出しているのか。
それに気付いているのであれば、ファンも含めて収益が分配される仕組みがあると良いなと。

そのために、コンテンツの二次収益の仕組みを作ることが必要になるでしょう。
そしてジャパンカルチャーとしてグローバル展開するためには、著作権の整理が必要になります。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカ「著作権戦争」と呼ばれる事件が起きました。
この事件は、アメリカの出版社とイギリスの作家の間で、著作権の保護と報酬の分配に関する争いが起こったものです。

「お前のコンテンツは、おれのもの。」
当時のアメリカでは、イギリスの作品に対する著作権の保護が不十分であり、アメリカの出版社はイギリスの作品を無断で複製や翻訳して販売していました。
これに対して、イギリスの作家は、自身の作品に対する報酬や保護を求めて、アメリカの出版社に対して訴訟や抗議を行いました。

この争いは、1911年にイギリスで制定された「帝国著作権法」や1923年にアメリカで制定された「著作権法」などの法律の改正によって、徐々に解決されていきました。

著作権の保護と報酬の分配に関する国際的な基準をどうすべきか。
より善き基準を確立するために、クリエイターとファンの間で尊重と協力の関係を築くことが必要だと考えます。

そして私は、この難題をリードするのに最も相応しい国は間違いなく日本だと思っています。


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