問題提起
世界の製造業における中国の支配力はかつてないほど強まっている。
中国の2024年の貿易黒字は約1兆ドル(約156兆円)となった。
この巨額の黒字(ポーランドの年間国内総生産=GDPにほぼ匹敵)は2018年の3倍に相当する。
国連のデータによると、世界の工業生産に中国が占める割合は現在約27%で、2018年の24%から上昇している。
国連の予測では、2030年までにこの割合が45%に達するとみられる。
これは第2次世界大戦後の米国の製造業全盛期や19世紀の英国のそれに匹敵する高さだ。
―クーリエ・ジャポンー
「関税はもはや無意味なのか?」
国際貿易の歴史は、「関税」という概念と共にあると言っても過言ではありません。
国家は関税を武器に産業を守り、また他国を締め付けてきました。
しかし、現在進行形の関税戦争は、もはや国家が主導する産業保護という枠組みを超え、「関税とは何か?」という根本的な問いに行き着こうとしています。
2024年、中国の貿易黒字は1兆ドルを突破しました。
米国は関税を強化し、トランプ政権の再来とともに中国からの輸入品には最大60%の関税が課される可能性があります。
しかし、関税が強化されるたびに、中国は生産拠点を他国へと移し、より巧妙に貿易ルートを拡大しています。
その結果、米国の関税政策は本来の目的を果たさぬまま、物価高騰と国内産業の混乱を引き起こしていると。
では、こうした状況の本質とは何か?
それは、「物理的なモノの生産と貿易は、もはや関税でコントロールできない。」という事実に他なりません。
つまり、グローバル・サプライチェーンの構造が変化し、製造業そのものが「AI主導の分散型ネットワーク」へと移行しつつあるということです。
「関税が消滅した未来、国家は経済をどうコントロールするのか?」
するとここで、こうした問いが浮かんできます。
今回は、その答えを探るために、関税という概念が持つ歴史的な役割を振り返りつつ、未来の産業構造の変化を考えてみましょう。
そしてこの現象は未来の私たちにどのような影響を与えていくのでしょうか。
背景考察
中国は2023年、日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。
中国製品は現在、世界のアパレル輸出の3分の1超、電子機器輸出の約30%、機械輸出の22%を占める。
太陽光パネルではこれが80%に達する。
中国は世界貿易における地位を強化するため、低利融資や補助金の形で製造業企業を支援し、各社が安値販売を続け、国外の競合企業を下回る価格で販売できるよう後押ししている。
EVや再生可能エネルギー設備などの新興分野における中国の卓越した専門知識と同様、人民元安も追い風となっている。
―クーリエ・ジャポンー
「関税の歴史は国家による産業支配の武器だった。」
関税は、単なる貿易障壁ではなく、国家経済の「ゲームルール」として機能してきました。
例えば、歴史を遡ると、19世紀の英国は関税を利用して植民地経済を支配し、「産業革命」を独占しています。
また、20世紀の米国は「スムート=ホーリー関税法」を実施しています。
それは、国内産業の保護を目的として、農産物や工業製品などの輸入関税を大幅に引き上げるというものです。
結果的には米国の輸出は3分の1以下に落ち込み、大恐慌を悪化させて、さらにはドイツの銀行制度の崩壊をもたらしました。
しかしその経験があればこそ、米国は戦後に自由貿易体制を構築し、関税を低減させながらも戦略的な産業保護を続けています。
「21世紀に入り、サプライチェーンが高度にグローバル化したことで、国家単位での「関税政策」が次第に意味を失いつつある。」
例えば、ファブレスメーカーとして有名なAppleのiPhoneの製造は、中国の工場で組み立てを行いますが、部品は世界各国から供給されています。
つまり、もし米国が中国製品に高関税をかけても、Appleはベトナムやインドへ工場を移すだけです。
結果として米国消費者が負担するコストが増えるだけです。
さらに、AIと自動化技術の進展により、企業は国を超えて「どこでも製造できる」時代に突入しています。
そうすると、ここで考えなければならないのは、「関税戦争が本当に勝者を生むのか?」ということです。
ではここで、未来の経済構造を大きく左右する要因を整理してみましょう。
- AIによる分散型生産の進化
・3Dプリンターとロボティクスの発展により、物理的な製品を「データ」として流通させ、各国で即時生産できる未来が近づいている。
・「関税」はモノの移動を制限するが、「データの移動」には無力。製造業がデータベース化すれば、関税という概念自体が時代遅れになる可能性が高い。 - デジタル経済圏の拡大
・すでにデジタルサービスが経済の中心になりつつある。もし製造業がデジタル化し、データのやり取りだけで完結する時代が来たら、関税が果たす役割は何か?
・AIが生産最適化を行い、物流を不要とするならば、国家が関税で産業をコントロールすることは不可能になる。 - 国家の経済管理能力の限界
・関税を強化することで、産業を守ることはできるのか?それとも、企業の適応力が勝るのか?
・もし、企業が「国境を越えたAI生産ネットワーク」を構築した場合、国家が関税を課しても意味をなさなくなる。
すると、「関税とは国家が産業をコントロールする最後の砦にすぎず、それが崩壊すれば、経済の主導権はテクノロジーに移行する。」という未来が浮かび上がります。
では、もしもAIと自動化が進んでサプライチェーンの存在意義そのものが揺らいだ場合。
「伝統的な工業国家(ドイツ、日本、中国)は、この変化を受け入れるのか?」
という新たな問題が生じてきます。
例えば、中国は現在、世界の製造業の27%を担い、2030年には45%に達すると予測されています。
しかし、もし製造業がデータ化され、無人工場が主流となれば、こうした産業構造そのものが不要になるということです。
これに対し、中国をはじめとする伝統的な工業国は「AI規制」を強化する可能性が高いでしょう。
つまり、関税戦争の本質は単なる貿易摩擦ではなく、「国家が産業を制御し続けるための最後の抵抗」とも言えそうです。
そんなことを考えさせられました。
それではまた、後編の②でお会いしましょう!
結論
こんにちは。久々のコメントとなってしまいました、、
AIの普及に伴う無人工場の誕生により、自国内で自由に製造ができるようになる▶︎自国経済を守る防壁である関税が意味をなさなくなる。
既に見えてきた未来かと思います。
そんな未来で関税を機能させるにはデータの規制が必要で、
それはブロックチェーンと大差なくなるのだろう。と感じました。
個人個人へIPアドレスを割り振り、相互監視(場合によっては、強権者はデータの閲覧も)という形が適しているのかなと。
となると、マイナンバーはその下地にも思えてきますし、暗号資産やNFTはその走りになっているのかな。と考えました。
非常に興味深く、勉強になり、考えさせられる記事でした
特に気になった部分
1.日本では中国が不動産バブル崩壊で国として崩壊する?ような論調があるがこの記事を観ると逆で、今後益々、力を持つ
2.今、トランプ大統領が関税政策で世界に波紋を広げているが、それは将来、無意味になるかもしれない
3.物の移動ではなく、AIや通信技術を使った「データの移動」こそがこれからの本丸である
日本はこれらにどう対応するのか?
製造業の最後の砦となっているトヨタは対応できるのか?
IT産業の覇者となっているGAFAですらわからないのではないか?
その中で世界の製造業を制し、deepseekで低コストAIで世界を震撼させている中国がリアルに脅威に感じられる
米国の覇権が終わり、米ドルの基軸通貨体制すらも崩壊する、とまことしやかに言われているが現実味を帯びてくる
今から産業政策の大転換、外交政策の見直し、そして柔軟な対応力を身に着けなければ日本は置いていかれるのではないか?
この変化の中でいかに思考、哲学の軸を持つか?今ほどそれが問われる時はないのではないか?