次世代継承学

【第60話】生きた証が世界の記憶に刻まれない人

「強者なんてどこにもいない!人類全てが弱者なんだ!俺もお前も弱者なんだ!」
サンライズ『新機動戦記ガンダムW』には、人類社会の発展に伴う負の側面について考えさせられるセリフがあります。

「強者がいなければ社会は停滞する。リーダーシップとは、強さを持って未来へと導くことだ。」
強者は社会に必要だという意見があります。
社会は強者によってリードされ、発展すると。
強者は変化を推進し、新しい方向性を示すのだと。

「弱者を支え合うことで社会はより強固になる。共感と助け合いが真の強さだ。」
弱者こそが社会の真の強さを作り出すという意見があります。
弱者の存在が社会の多様性と包摂性を高め、共感と協力の精神を育むと。

社会は何によって導かれて来たのだろうか。
あなたは、どう思いますか?

「人間の強さは社会的な関係の中で形成され、評価されるものだ。」
人間は自分と他者を比較し、優劣や優越感を感じる生き物です。
しかし、人間の強さは一様に定義できるものではありません。

人間はそれぞれに異なる才能や特性を持ち、様々な環境や状況に適応する能力を持っています。

例えば学校では、学力の高い「強者」とされる生徒と、そうでない「弱者」とされる生徒の間には、明確な線引きがされがちです。
しかし、学力以外の才能を持つ生徒も多く、彼らが社会に貢献する場合もあります。

したがって、強さとは何かという問いに対して、一つの正解は存在しません。
そのため、強者と弱者ではなく、天才と凡人に置き換えて話を進めていきます。

「常に世の中を動かしてきたのは一握りの天才だ!」
ハーグリーブス、アークライト、ワット、カートライト、スティーブンソン。
産業革命は、技術や経済の分野で優れた発明家や起業家によって引き起こされました。

彼らが生み出した機械や製品を開発し、生産性や効率を向上させた。
また、その発明は新しい市場や需要を創出し、経済の発展に寄与しました。

「天才の足を引っ張ることしかできなかった俗人共に何ができた!」
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ・ブエナローティ、ラファエロ・サンティ。
ルネサンスは、芸術や文化の分野で優れた芸術家や思想家によって引き起こされました。

彼らは宗教支配の世界において、古典文化の復興や人間中心主義の思想を展開し、美や知の追求を行いました。
また、新しい芸術様式や文学形式を創造することで、文化の発展に寄与しました。

しかし、社会を動かす天才は、時に自分の利益や権力を優先し、他の人々の権利や利益を無視することがあります。
例えば、植民地主義や帝国主義は、強国が弱国を支配し、その資源や人民を搾取するように。

ではここでいう凡人とは何か。
それは、能力や才能が低い人間ではなく、社会的に不利な立場にある人間です。
しかしながら、社会の安定や調和に貢献する人間であるという特質を持っています。

つまり、凡人がいなければ天才は生まれず、社会も成立しないということです。

「凡人の救済は、やらなければならない必要な施策である。」
凡人は自分の生活や教育や健康を改善するために、様々な機会を得ようとします。
得るということは、消費するということであり、消費があるから経済は成立します。

また、凡人は社会の不平等や不正に対して、公正や正義の要求を行います。
それは、道徳規範の正解を生み出すことであり、社会の多様性と包括性を促進させます。

すなわち、凡人が社会を守り、天才は生かされているということです。

ではここで一緒に考えて頂きたいことがあります。
「はぐれた人々はどうすれば救済されるのでしょうか。」
あなたはどう思いますか?

「凡人は、自分の立場や状況に甘んじ、努力や挑戦をしなくなり、果ては社会の生産性を著しく停滞させる行為に及ぶ。」
無差別攻撃。
自分の不満や恨み、或いは信条を貫くために不特定多数の他者に向け、暴力や破壊を行う行為です。

テロリズムのような行為は批判されて然るべしという意見があります。

しかし、私はここで見落とされがちな視点があると考えています。
それは、何がそうさせたのかという観点です。

人間は社会的な存在であり、自分の強さを認められたいという欲求を持っています。
そのため、自分の強さを他者と競争することで証明しようとする場合があります。
だから、自分の強さを他者に押し付けることで支配しようとする場合もあります。

「運命とは神が決めるものではないのか?なぜ人の制度が必然を生み出しているのか。」
現代社会には、未だに生を受けた瞬間からケイパビリティを著しく損なわれる場合があります。
例えば、カースト制度は生まれながらに決められた階級によって、人々の権利や義務が制限されます。

「人は忘れられた時に死ぬ。」
尾田栄一郎『ONE PIECE』において、その存在が世界から記憶されなくなった時に人は本当に死ぬのだというセリフがあります。
つまり、生きた証が世界の記憶に刻まれないことを死と呼ぶのだと。

では、記憶から消す方法とは何か。
それは1つしかありません。

「人を殺めるたった1つの方法は、理解しないこと。」
つまり、私は、記憶から消す方法は理解の欠如だと考えました。

「弱ェ奴は死に方も選べねェ。」
自然死と異状死があります。

自然死とは、外傷や病気によるのではなく、加齢現象が進み、老衰によって死亡することです。
異状死はそれ以外のものです。

この定義を借りれば、自然死は理解されて亡くなることで、異状死は理解されずに亡くなることです。

人は死を恐れると言いますが、それは異状死を恐れているのではないでしょうか。
それは、自分の内にあるものが理解されないことを恐れるということではないだろうか。

「はぐれた人々は理解されないからはぐれたのだ。」
もしそうだとするならば、はぐれた人々の救済は裡(内)を理解することにあるのではないでしょうか。

あなたならば、どうやってはぐれた人々を救済しますか?


※新機動戦記ガンダムW とは ※ルネサンス とは ※ONE PIECE 107巻

未来を予測する”きっかけ”を生み出すメルマガ

似たような情報や視点に囲まれてしまう現代社会。
この先もネットの情報はますますあなたに
最適化されていきます。

でもそれで本当に良かったのだろうか?

成功事例の横展開が業界にイノベーションをもたらすように、
身近でない情報が実は突破の糸口になったりする。

共通点を繋ぎ、線と面で捉え直すこと。

それが我々の贈る言葉の特色であり、
情報から光を引き出す編纂技術だと考えています。

考えるきっかけとなるイベント情報や新着記事を
メールでお届けいたします

関連記事

コメント

  1. AYA

    私は死を、生まれる前に戻るだけのことでありネガティヴに思っていなかったです。また、死ぬことは個人的なことと捉えていたので自分以外の人がどう思うか、理解されるかなど気にしたことは無かったです。
    死んだら何も近くできないので、死んだ後に理解されるかどうかは大した問題ではないと思っていましたが、理解されている方が死んだ人も幸せかもしれないですね。

    ただ、生まれた国や身分によって命の重さが違うことは良くないと思います。
    先進国の人たちは発展途上国の方よりもお金や時間を持っているので、よく考えて思いやりを持つことが大事だと思います。フードロスや衣料品のロスも、貧しい人たちに分け与えられればいいのに、と思います。

    アパレルブランドでたくさんのカラー展開で製品を作っているブランドは、よく売れるベーシックな色の商品をより良く見せるために紫だとか、誰が着るんだろ?なカラー展開もあえて作っているそうです。
    自分たちの経済よりも、海外の貧しい人たちや環境のことを優先させられるバランスをもつ、先進国の方がもっと賢くなる必要があると思います。

    • 青木コーチ

      いつもコメントありがとうございます!

      「自分たちの経済よりも、海外の貧しい人たちや環境のことを優先させられるバランス感覚」
      この言葉が印象に残りました。

      仰る通りで、物を得るためにマーケティングというものがあります。
      そのために、投資対効果及び経済コストが最優先される事項であって、環境コストは二の次です。

      大手ブランドは売れ残りの服は流通させず回収します。
      そしてしばらく倉庫に寝かせて、廃棄してしまいます。

      なぜなら、市場に服が余ると需要と供給の関係で安くなってしまうから。
      ブランディングに傷が付くと考えるからです。

      だから、ネームタグを切って販売する取り組みや途上国に寄付という手段を取っています。
      良い取り組みをしていると称賛するには、大量廃棄をし過ぎているのでなんとも言えないところです。

      「今年の流行色や流行りのスタイルは2年前から計画されている。」
      つまり、アパレルブランドに現状を是正をしようと思っても各サプライチェーンがそれを許さない。
      それぐらいグローバル化によって経済が絡み合ってしまいました。

      これを解くのは骨が折れる作業なのです。
      そんなことを考えさせられました。

CAPTCHA